音の継子は我妻善逸に過保護4 (ページ20)

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｢うーん…うるせぇなぁ、てかくすぐったい。｣

さすがに騒然としている病室では寝続けられなかったようで、善逸が目を覚ました。

｢あ、起きた。｣

｢紫音か…寝てる時髪止めてって、くすぐったいから。｣

｢ごめん(ソーリー)、つい。｣

ついじゃないよ、と言いながら一つ欠伸をした善逸が、出入口を見た途端寝起きとは思えない程に声を張り上げた。

｢うわーっ！！また来てるよっ、ひょっとこ軍団が！！殆ど毎日来るじゃんやだぁ！！｣

｢やだとか言わない。あの中に善逸の刀打ってくれてる人もいるんだからね？って話してる間にまた増えた。｣

｢何でみんな示し合わせたみたいに同じ時間に来るの！？病室がギチギチになるんだよ！！｣

そう言いながら隠とひょっとこ軍団から逃れるように、善逸は俺へとしがみつく。
普通なら離れろだとか、拒否する様な事でも俺は善逸限定でそれを容認する。
はいはい、とはたから見たら呆れてるような声で言葉を紡ぐ俺だがどさくさに紛れて唇を善逸の耳へと寄せた。

｢Shall we go to my hospital room?(俺の病室へ行こうか。)｣

触れるか触れないかの距離で唇を動かせば、押し寄せる隠とひょっとこ軍団に怯えていた善逸ですらピクッ、と肩を揺らす。

｢わっ……かんないからっ…！｣

肩口に顔を埋めた善逸に、俺は気を良くしクツクツ、と喉奥でひと笑いしてから寝台から腰をあげる。

｢ごめん(ソーリー)、自分の病室戻るから通して。｣

出入口までの道を塞ぐ隠やひょっとこ軍団にそう声を掛けつつ、善逸を抱えたままの俺は輪の中から外へと脱出した。

｢紫音くん。｣

｢ん？｣

廊下に出る手前で、声をかけられ首だけで振り向いた。
そこには雛鶴がいて、いつもの様に微笑みを携えている。

｢紫音くんも、明日よね？里、離れる前に家によってくれないかしら？｣

｢Don't worry.(大丈夫だよ。)部屋に私物置きっぱなしだから、取りに行くつもりだったからね。｣

｢そう。なら、待ってるわ。｣

ニコッ、と音が聞こえそうに雛鶴は笑った。
それに一つ頷いてから、俺は自分の病室へ向かって廊下を歩く。

｢暖かいね、善逸。｣

｢うん…もう、春だもんな。｣

｢外歩けば、善逸みたいな花たくさん咲いてるだろうね。｣

｢…それって、俺の髪型が蒲公英だって言いたいんだろ。褒めてないよね、それ。｣

そう言いながら善逸は、俺の頬を両手で挟んだ。
自ずと突き出る、俺の唇。