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炭治郎が背中に生えた骨の触手で、善逸を殴ろうとしていた。
何も考えず、俺はいつもの様に善逸を背中に庇い立つ。


「だめ!!」

「ダメだ、やめろっ!紫音っ!!」


しがみついたままの禰豆子が炭治郎に。
背後で善逸が俺に。
悲痛な声を上げる。
こんな攻撃もろに受ければ、命なんてその場で掻き消える。
そんなことは分かってるんだ。
けれど、それよりも俺は善逸を優先させる。

善逸がいない世界なんて、意味が無いから。

腕を交差させて、腹に力を入れた俺は完全に受け身の体勢で殴られるのを待った。
けれど、それは俺に届くことはなくて。


「水の呼吸 肆ノ型、打ち潮!!」


川の流れを思わせる太刀筋で、炭治郎と同じ呼吸の義勇がそれを斬り伏せていた。
だけど、それは猫が玩具にじゃれつく様なもので。
炭治郎が口を開けると、エネルギーがそこへ集まり出す。
すると、空気がキキキ、と鳴る。


「誰も殺さないで!!お兄ちゃんお願い!!」


そんな願いも虚しく、炭治郎は集まったエネルギーの塊を放った。
咄嗟のことだったんだろう。
禰豆子が炭治郎の口の前に、手を出して止めようとするのが見えた。

ドギャ



「わああっ、禰豆子ちゃん!!」

「善逸っ!」


今にも駆け寄りそうな善逸を、振りほどかれた隠の代わりに抱き込んだ。
エネルギーの塊をまともに受けた禰豆子の左手は、血に塗れ爪も剥げていて見るだけで痛いものになっていた。


「だめ!!もう今のやったらダメ!!」

「紫音っ、禰豆子ちゃんがっ!!嫌だ嫌だっ、離れて!!炭治郎っ…やめてくれ、頼むっ!!」


押さえつけてる俺の腕に、善逸は爪をぎりぎりっ、と突き立てる。
俺だってどうにか二人を助けたい。
反対側の伊之助も、あまり良い状態じゃない。


ごめんね(ソーリー)っ……」


隻腕となった義勇が、一人で炭治郎とやりあっている。
その光景を眉間に皺を寄せ見守りながら、俺はふと疑問に思った。
目の前に禰豆子(喰い物)があるのに、炭治郎はどうしてそれを殺し喰おうとしないのか。
鬼となったのなら、喉から手が出そうなものなのにも関わらず。


Are you resistig…?(抗ってるっていうの…?)


そうだとして。
そうだとしても、炭治郎が自我を取り戻すなんて奇跡でしかない。
そんな奇跡を、誰が起こせるの?
起こせるはずは、ない。

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春月是駒(プロフ) - おいもさん» ありがとうございます! (10月28日 8時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
おいも - おもしろい!頑張ってください (10月27日 18時) (レス) @page10 id: a2ba9c7e56 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年10月19日 14時

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