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頚に宛てがわれた刀なんかには見向きはせず、炭治郎は俺へと伸びた爪のある手を伸ばして噛みつかんばかりに口を開けて鋭い牙を見せている。

一瞬の隙で命運が尽きるか尽きないかが決まる最中、俺は躊躇った。
師範なら、斬ったんだと思う。
けれど、俺は躊躇った。
俺は愛する人(善逸)の前で後輩(炭治郎)に喰われながら、死に逝くのかと腹を括った。

目の前で血飛沫が上がる。


「うっ…!」


知った音と女の子のくぐもった痛みを我慢する声。
俺の体に痛みは、ない。


「お兄ちゃんっ、ごめんね…!」


そう言って炭治郎にしがみついていたのは、妹で鬼であった禰豆子だった。
声の震え方から、泣きながら鬼へ堕ちた兄に戻るよう声をかけていた。
そんな妹の声が届いているのかはわからない。
炭治郎は、雄叫びを上げると禰豆子の背に刺していた爪で思い切り傷をつけていく。
その痛みに禰豆子は、声をあげぬように押し殺している。


「炭治郎やめろーっ!!」

「善逸!危ないから離れてっ!!」


女の子の知り合いの中で、禰豆子は善逸が一番可愛がっていた娘だった。
それが、鬼だろうと関係はなくて。
俺と恋仲になってからも、何度か二人で夜な夜な出掛けているのを知っていた。
それもあってか、善逸は隠に支えながらも体を張っている。


「禰豆子ちゃんだぞ!元に戻ってる!人間に戻ってる!!こんなことしたら死んじゃうよ!!"お兄ちゃん"って呼んでるだろ!!」


必死な同期(善逸)の言葉にも、炭治郎は雄叫びを上げる。


「やめろーーーっ!!」


俺に蹴飛ばされた伊之助が戻ってきて、炭治郎の頭を殴りつけた。


「ガーガー言うな!禰豆子に怪我させんじゃねぇ!!お前そんな…そんな奴じゃないだろ!あんなに優しかったのに…!!元の炭治郎に戻れよォオオオ!!」


そう言いながら殴り続ける伊之助。
それを煩わしく感じた炭治郎は、衝撃波で伊之助に善逸、俺そして近くにいた義勇をも吹き飛ばした。
炭治郎に抱き込まれ、自らしがみついている禰豆子には相当な衝撃が伝わったはずだ。


「はぁ…はぁ…炭治郎……っ!」


詰まった息を吐き出し、呼吸を安定させる俺の視界に映る炭治郎の背中には無惨の背中から生えていた骨の触手があった。
それでも禰豆子は、兄が戻ってくるのを望んで声をかけ続けている。

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夜月銀桜(プロフ) - 一気読みしました…2人の関係大好きです! (5月8日 18時) (レス) @page22 id: 4ba1a8817b (このIDを非表示/違反報告)
春月是駒(プロフ) - おいもさん» ありがとうございます! (10月28日 8時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
おいも - おもしろい!頑張ってください (10月27日 18時) (レス) @page10 id: a2ba9c7e56 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年10月19日 14時

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