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「動ける者ーーーっ!!武器を取って集まれーーーっ!!」
意識が戻って初めに聞こえてきたのは、俺を呼ぶ善逸の声じゃなくて義勇の切羽詰まった叫び声だった。
「何か、騒いでる。」
起き上がろうとすると、治療に当たっている隠に動かないで、と制された。
「炭治郎が鬼にされた!太陽の下に固定して焼き殺す!人を殺す前に炭治郎を殺せ!!」
「え…」
「ああ!鏡月さん!治療がまだ!」
理解が及ばない善逸から、音が漏れた。
俺は理解する前に起き上がったからか、隠がまた止めようとする。
「紫音!?待って!血止めだけでも…!」
「止まった。」
「嘘つくなって!ちょっ、紫音!」
止める善逸の言葉を背中に受けて、止まらぬ頭からの血を流したまま俺は炭治郎の下へと足を進める。
対応していた義勇が、払われて出来た隙に首を狙う炭治郎。
けれど、俺よりも早く動いたらしい伊之助が止めに入った。
「何してんだーーーーっ!!」
ぐらついた義勇の背を、駆けつけた俺が支える。
「失血で目が回る……」
「休んでてもいいよ…?」
「出来ないだろ…っ。」
辛そうにしているのに、義勇の瞳はまだ死んでなかった。
「半々羽織りだぞ!仲間だぞ!!炭治郎っ!」
そう同期に叫びかける伊之助だが、目に映るのは疑いたくなるほどの光景だった。
グルルグルル、と獣のような唸り声を上げ目の前の伊之助を血走った目で炭治郎は捉えていた。
「嘘だろ、炭治郎…もうみんな戦えないよ。ボロボロで……こんなのあんまりだ。禰豆子ちゃん、どうするんだよ炭治郎…っ!」
背後から聞こえてくる善逸の声。
悲痛な音が混じってる。
迫る炭治郎に意を決した伊之助が、頚へと刀当てるが猪頭から涙が溢れ刀は皮膚さえも傷つけることはなかった。
そんな伊之助を蹴り飛ばして、炭治郎の手から逃れさせた俺は頚に紫紺の刃を二本あてがった。
「俺たちは仲間だからさ、兄弟みたいなものだからさ。誰かが道を踏み外しそうになったら、皆で止めような。どんなに苦しくても、つらくても。正しい道を歩こう。」
悲鳴嶼さんのところで訓練していて、休憩を三人と一緒に取った時に炭治郎が伊之助と善逸に言った言葉。
そこには俺も入るらしく、炭治郎が俺を見て笑って言った。
そうなると長男ですね、って。
そんな炭治郎が、脳裏に蘇った。
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夜月銀桜(プロフ) - 一気読みしました…2人の関係大好きです! (5月8日 18時) (レス) @page22 id: 4ba1a8817b (このIDを非表示/違反報告)
春月是駒(プロフ) - おいもさん» ありがとうございます! (10月28日 8時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
おいも - おもしろい!頑張ってください (10月27日 18時) (レス) @page10 id: a2ba9c7e56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年10月19日 14時