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岩を押し始めて五日。
目標である一町までには未だ程遠いけれど、俺はゆっくり前進していた。
「す、凄い!鏡月さんっ、岩を押してる!」
「くそっ!むらさきに先を越されたぜ!!」
「えっ!?だっ、大丈夫なのっ!!??どっかの血管、切れたりしてない!?」
近くで見ていた三人が、三者三様の反応をしている。
「ふんっ……ぐっぬぬぬぬぬぬぬぅっ……Power is power…!!」
脳裏に焼き付いている両親が喰われた時のこと。
俺の大切な
そして、
それを思えば、無意識下にある力が表へと出てくる様な感覚があった。
後から炭治郎から聞かされたけど、俺は知らないうちに"反復動作"なるものをしていたらしい。
……あ、それってルーティーンのことなのかな?
───
翌日には、炭治郎と伊之助も岩を動かすことに成功していた。
残すは善逸だけだったが、木の影に隠れたままだった。
その日の夜。
俺は、善逸に手を引かれて森の中へと連れてこられた。
俺の背後には、寝泊まりしている建物がある。
「善逸…何か、あった?」
ピクンッ、と反応した善逸は、その反動で俺の手を離していた。
「なぁ、紫音。…大好きな人が、死んじゃった時ってどうすればいいのかな。」
淡々と紡がれた言葉。
けれど、聞こえてしまった。
善逸の内なる音が。
……怒りと悲しみ、悔しさ。
色んな音が、不協和音を奏でていた。
「それって…善逸が"爺ちゃん"って呼んでる人のこと?」
「そう……俺の兄弟子が、鬼になったんだって。」
「ん、それで?爺ちゃんは、どうしたの?」
「門下から鬼を出したことに責任感じたらしくて、介錯付けずに腹切ったって。」
くるり、と振り返った善逸の顔は笑っていた。
泣きたいはずなのに。
今にも泣きそうなのに。
笑ってるんだ。
俺は見てられなくて、善逸を腕の中へ閉じ込めた。
「…紫音?」
「泣きなよ。我慢しないで?俺の胸ならいくらでも貸すから。」
少しきつめに抱きしめて、たんぽぽ頭を優しく撫でる。
訃報を知ってから我慢してたのか。
善逸は、俺の隊服をきつく握りしめて泣いた。
爺ちゃん、爺ちゃんって。
「……ごめんよ、紫音。」
「
泣き止んで顔を上げた善逸の目元は、真っ赤だった。
少しばかり、腫れてる気もする。
そんな泣き腫らした目元を、優しく撫でた。
「紫音、俺決めた。獪岳は俺が討つ。俺が、やらなきゃ…」
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春月是駒(プロフ) - すずめさん» ありがとうございます!書ききれるように、頑張ります! (12月9日 14時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - めっちゃ好きです…応援してます (12月9日 13時) (レス) @page45 id: 200c70ae26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年8月19日 18時