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何度か会話をした善逸は、げんなりとした表情で疲れた、と言わんばかりに仰向けに寝転んだ。
「あ、星…」
そんな呟きに、俺もつられて夜空を見上げた。
木々の間から見えた、沢山の星々。
この中のどれかが、杏寿郎で。
俺の両親も、この中にいるのだろうか。
そんなセンチメンタルな事を、不意に思った。
無我の境地、とでも言うのだろうか。
無意識下で、
その方向に視線を向ける俺。
寝転がってた善逸も、何か感じ取ったらしくガバッ、と起き上がっていた。
「少し、離れたとこ…かな?」
「これって……」
善逸が俺を見てから、伊之助へと視線を向けた。
伊之助は静かに頷いて、それを肯定する。
「気付いたか、紋逸。むらさきも。」
「い、伊之助……あれって、まさか。」
「俺はお前たちより先に分かってたぜ。」
反らされた猪頭が、得意気だった。
───
「へぇ。よくやったじゃねぇか、お前ら。」
上機嫌な師範。
そんな師範が、泥まみれの俺たちを労っている。
温泉にしては浅い。
とはいえ、結構掘った俺たちは泥鼠、といっても過言ではない状態だ。
ちなみに、空は白んできている。
「上出来だ。」
「へぇ、すごいもんだねぇ。温泉、掘り当てちゃうなんてさ。」
「温泉なんて、いつぶりかしら。」
「わぁ〜!天元様、みんなで一緒に入りましょうね!?ね!?」
まきをに、雛鶴、須磨。
温泉に目が無い嫁三人衆も、三者三様に喜んでいて今にも着物を脱いでお湯に浸かりそうな勢いだ。
「善逸…」
「何…?」
隣の鼓動が次第に速まっていって、思わず声を掛けてしまった。
抑えてるつもりなんだろうけど、若干頬が紅潮しててあわよくばを狙ってるのがバレバレ。
そんな俺たちに向かって、伊之助が声高らかに宣言した。
一番に入る、と。
何故か?
「そんで強くなって、お前を倒す!祭りの神!」
変なポーズ取ったと思えば、ビシッ、と師範を指を差した。
師範はそんな伊之助を、訝しげに見やった。
「は?強く?何言ってんだ、お前。頭、大丈夫か?」
「お前こそ、何言ってんだ?温泉に入ると、強くなるんだろ?」
「はぁ?」
そんな二人のやり取りで、俺と善逸からは血の気が引いて言った。
「や、やばくない…?」
「Haha…」
バレる。
伊之助を騙して、手伝わせた事が。
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春月是駒(プロフ) - すずめさん» ありがとうございます!書ききれるように、頑張ります! (12月9日 14時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - めっちゃ好きです…応援してます (12月9日 13時) (レス) @page45 id: 200c70ae26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年8月19日 18時