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十五個あった
すでに、十一個も食べている計算になるが伊之助の方からは、ぐううううう〜っ、と地響きにも似た音がしている。
「お前、そんだけ食べて、まだ減ってんの?なら、それも食えよ。俺は、混よ…温泉で胸がいっぱいで、食欲そんなねぇし。けど、紫音の分は残せよな。」
「ん、なんなら俺の分もあげるけど?」
「何、言ってんだ?二人して。俺じゃねぇぜ。」
「え……?だって今の音は…」
美少女顔で睨む伊之助と、小首を傾げる善逸。
なら、この音はなんだ?
すると、ぎゅるるるるるううううう、と今度ははっきりと伊之助の背後から聞こえてきた。
「紫音…っ?ま……まさか、だよね?これって……」
善逸の視線が恐る恐る伊之助の奥へ向けられる。
俺も目を凝らせば、何かと見つめあってしまった。
「
そう、音の正体は熊。
師範とお揃いの隻眼の熊は、一般的に見かける熊と比較して二倍は大きかった。
口の両端からは、滝のようなヨダレを垂らしている。
目的は
はたまた、俺たちか。
「ギイィィィヤアアアアアアアアァァァァァァァ!!!」
「
「この程度の熊公、俺様がすぐに仕留めてやるぜ!!」
俺と伊之助がそう言うも、気が動転している善逸には届くことはなかった。
「おおおお美味しくない!!きっと、美味しくないよ!俺!真面目な話!伊之助も紫音も筋肉ばっかで筋張ってて不味いから!」
喚き散らしながら近くにあった大木に半ば駆け上がるように上る。
「半逸!その木は…」
「え?」
巨大な熊と組み合う伊之助が叫び、我に返った善逸が慌てた瞬間ミシッ、という音が俺の耳に届いた。
「中が腐ってんぞ。」
「早く言ってよね!?そういう事はさあああああああああ!!!」
善逸が泣きながら大木と共に、倒れ込みだした。
反射的に俺は善逸の落下点へ体を滑り込ませ、抱き込んだ。
「あ…ありがと…」
「
照れつつも礼を言う善逸に、微笑んでそう返してると耳に、ぶうううううううん、と嫌な音が聞こえてきた。
明らかな羽音。
特定も簡単。
あの虫しかいない。
俺も善逸も、恐る恐る音の方を見る。
倒れた木の幹に、巨大な蜂の巣があった。
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春月是駒(プロフ) - すずめさん» ありがとうございます!書ききれるように、頑張ります! (12月9日 14時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - めっちゃ好きです…応援してます (12月9日 13時) (レス) @page45 id: 200c70ae26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年8月19日 18時