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伊之助は癇癪を起こし、善逸は俺の要らない発言にご立腹。
それからも場所を変えながら、無駄に何度も土を掘り返した。
真っ赤に染まっていた山は、気付いたら夜の帳が下りていた。
「おーい!我妻〜ぁ!鏡月〜!どこだぁー?」
ふと、聞こえてきた誰かの声。
善逸が村田さんの声だ、と言った事で、善逸の恋人は禰豆子、と誤解している先輩隊士だと理解した。
手を振る善逸の先へ視線を向ければ、他にも二人いた。
三人が大きな風呂敷を抱えて、善逸に手を振り返している。
「さっきは、悪かったな。」
俺たちの下へ来て、第一声が謝罪。
理由は、師範が怖いからだった。
「ほら、こっそり飯持ってきたぞ。これ食って、元気出せよな。」
「村田さん……みんな。」
善逸の鼻が、ぐすっ、と鳴った。
風呂敷の中には、かなり大きい
水を渡され、俺は礼を言ってからそれを体へ流し込む。
隣では、感激のあまりに善逸が泣き崩れてた。
「
「いや、須磨さんに頼んだんだ。あの人が一番、頼みやすかったし。」
「
それで合点がいった。
歪な形も。
握りの甘さも。
善逸が口走った塩っぱい!、という味付けも。
須磨なら納得だ。
「ほら、鏡月も食え。食って元気つけろ。何やらされてんだか、知らねーけどさ。腹が減っては何とやら、だろ。」
改めてお礼を言えば、嫁三人いる師範に負けるな、と言い残して帰って行った。
「紫音……っ、食べないの?」
頬張っていたのを飲み下した善逸が、俺にそう聞いてきた。
食べたいよ。
そりゃ、ね?
体動かしてるし、腹の虫も鳴いてるし。
食べたいよ。
けど、ね。
「ん、俺はいい「嘘。」
耳の良い善逸に、遮られた。
ずいっ、と目の前に差し出される
握りが甘いから、善逸の指の間から崩れて落ちそうになってる。
「食っとけ、むらさき。」
「そうだよ、紫音。本当だったら、俺たち当たらなかったんだから。」
「
ため息と共に、そう返した。
伊之助は分からず首を傾げるが、善逸はほら、と唇へ
口を開けてそれを中へと受け入れれば、想像していた通りの塩っぱさが口内に広がった。
それがまた
疲れた体には、ちょうど良かった。
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春月是駒(プロフ) - すずめさん» ありがとうございます!書ききれるように、頑張ります! (12月9日 14時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - めっちゃ好きです…応援してます (12月9日 13時) (レス) @page45 id: 200c70ae26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年8月19日 18時