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「え、まずくない?」
「場所さえ見当がつけば、俺の呼吸で一発だよ。」
「そうだね、けど……見当、つけられる?」
「ん……」
そう聞かれて俺は、自分の口の前に人差し指を立てて善逸に静かにするよう促した。
そのまま目を閉じて、嗅覚と聴覚へ意識を向ける。
だけど、炭治郎の様にはいかなかった。
嗅覚とは別で、聴覚への刺激はある。
目を開けて音がする方を、指を差した。
そこは茂みになっていて、その奥で何かがガサガサ、とその茂みを揺らしていた。
すると、その何かは突如茂みから飛び出してきた。
「うおおおおおおおお!!」
「うわ!?」
野うさぎか何かだと思っていたが、飛び出してきたのは"猪"だった。
「伊之助?」
「猪突猛進!猪突猛進!」
あれ?
伊之助って、確か次行くよう言われてなかったか?
山の上り下りだけじゃ飽き足らず、お手製の背負子に
「なんだ、伊之助かよ……びっくりさせんなよ。お前も山の上り下りしてんの?そんなバカみたいなデカい石まで背負って。」
「いや、伊之助。師範に次の柱のところに行っていいって言われてなかった?」
「ああ。今朝、言われた。」
なら、ここで君は何してるの。
俺だけではなく善逸も思ってたようで、早く行くよう促している。
「最後に祭りの神に一矢報いてからじゃねぇと、口惜しいからな。せめて、一撃は入れてやりてぇ。」
伊之助は未だに師範を、"祭りの神"と認識しているらしく利き手である右手の拳に力を込めていた。
「
「あ?むらさき語喋んなよ。分かんねぇから。」
隣の善逸は、伊之助のどこからくるか分からないやる気にげんなりしている。
おそらく、善逸はその辺に関しては一般的だと思う。
前向きお化けな炭治郎と伊之助に挟まれてれば、そりゃ善逸が悪く映るってものだろう。
「で?お前は何してんだ。サボりか。」
「サボりじゃねぇよ!特別訓練だって。」
「師範が温泉掘れって。」
「そ。それで二人で掘ってんだけどさぁ……」
そう言って善逸は、はぁ…、とため息をつく。
うん、掘る前段階ね。
内心、善逸の言葉を訂正していると伊之助が聞き返してきた。
何とも発音がおかしい。
「"おんせん"じゃなくて、温泉。」
「おんせんってなんだ?掘るってことは、筍みたいなもんか?美味ぇのか。」
「えぇ?お前、温泉知らないの?温泉だよ?」
「食ったことねぇ。」
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春月是駒(プロフ) - すずめさん» ありがとうございます!書ききれるように、頑張ります! (12月9日 14時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - めっちゃ好きです…応援してます (12月9日 13時) (レス) @page45 id: 200c70ae26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年8月19日 18時