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休憩は師範が来ることで、終わりを告げた。


「塵共、休憩は終わりだ。」


手に持った竹刀を威嚇なのか分からないが、師範はバシバシ、と音を立てながらやってきた。
隻腕、隻眼を表の理由に鬼殺隊を引退したにも関わらず、それを感じさせない程師範は元気だ。
嬉々として竹刀を振るう師範は、俺たちをいたぶる事を楽しんでる。
そう取られてもおかしくないくらいには、生き生きとしている。


「各自、倒れるまで山の上り下りな。それから、紫音と善逸。てめぇらは特別訓練だ。」

「え……」


善逸の顔色が悪くなった。
少し前まで頑張れだの、お前の味方だだのと豪語していた先輩隊士たちは、我先にと言わんばかりに脱兎の如く離れていった。


「師範、特別訓練って?」

「温泉を掘れ。」

「は?」

「What?」


俺と善逸の声が重なった。
一拍遅れて、目が合った。
また、同時に視線を師範へ戻った。


What?(なんて?)

「すみません。今、なんか幻聴が聞こえたんですけど……」

「温泉を掘り当てろ。それまで、てめぇらは飯抜きだ。」


師範はそう言うと、さも当然と言うかのように準備していた二本の鍬を俺と善逸に投げて寄越した。
人間というのは、投げられたら脊髄反射で避けるか受け取るかのどちらかを選択する。
どうやら俺たちは後者を選択したようで、手にはしっかり鍬が握られている。
使い込まれた鍬は、ずっしりと重たい。
俺も善逸も、度肝を抜かれていた。
色んな意味で。
数度、俺も善逸も視線を師範と鍬とお互いとを行き来していた。


「はあああああああああ!?」


理解が及んだ善逸が、両目を見開いて二度喚いた。


「師範、Are you ok?(頭大丈夫?)温泉って、そんなに簡単に掘れるものなの?」

「いやいや、掘れないって紫音。もしかして、嫌がらせ?嫌がらせですか。そっちがその気なら、俺たちこれで帰らせてもらうんで。お世話になりました!」

「ちょっ、善逸!?」


俺の手を取って善逸は、師範へ背を向けた。
まずい。
訓練に関しては、師範は怒ると大変な事になる。
身をもって知ってる俺が言うんだから、間違いない。
そう思っていたのに、師範からはあっそォ、と罵声も竹刀も飛んでくることはなくて。
あっけらかんとしていた。
予定調和から外れた事をされると、人間誰しも不安が襲う。
もちろん、俺も善逸もだ。
ソロリ、と善逸が振り返ってきた。
視線は俺の後ろへ向けられている。
俺もゆっくり振り返る。

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春月是駒(プロフ) - すずめさん» ありがとうございます!書ききれるように、頑張ります! (12月9日 14時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - めっちゃ好きです…応援してます (12月9日 13時) (レス) @page45 id: 200c70ae26 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年8月19日 18時

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