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なのに、何故か伊之助は妓夫太郎に背後から左胸を血の鎌で貫かれているんだ。
「伊之助ぇっ!」
「
頭の中が疑問で埋め尽くされる。
はっ!、として俺は、集音能力へ意識を向ける。
気付けたはずなのに、零れ落とし一雫。
ばっ、と師範が妓夫太郎と戦っていた方へ、視線を向ける。
奇しくも、炭治郎と行動が重なった。
「宇髄さんっ!」
「師、範…?」
そこには地面に突っ伏している、師範の背中が見えた。
傍らには、刀を握ったままの状態の左腕が落ちている。
ただ、視覚はそうでも聴覚がそうじゃないと訴える。
「"忍"の術には、"病葉の術"ってのがある。どういう意味か分かるか?」
「知らないよ、というよりどうでもいいんだけど?」
「まぁ、そう言わずに聞いとけ。"病葉の術"ってぇのはな…戦ってる相手に死んだと思わせ油断させる為の術だ。その油断したところを突いて、最後には勝つっていう戦法さ。」
「それってつまりは、忍は自己犠牲の塊って事だよね?」
「違うわっ!どう理解したら、そういう解釈になるんだよ…お前の頭の中覗いてみたくなるわ。」
「趣味を疑うよ、師範…」
何時かの師範とのやり取りが、俺の脳内に回帰していた。
そうか、あれは病葉の術とかいうやつか。
そう考えれば、合点が行く。
「炭治郎っ、危ないっ!」
切羽詰まった善逸の声に現実へ引き戻された俺の目の前で、善逸が鬼の攻撃によって崩れゆこうとしている屋根の上で炭治郎を押して助けようとしていた。
「善逸…っ!」
勝手に体が動いた。
咄嗟に善逸へ駆け寄り、抱き締めたと思ったらガラガラガラガラッ、と音を立てて建物が崩れ俺と善逸を飲み込んだ。
───
軽く意識を飛ばしていたらしく、熱さと痛みで気が付いた。
辺りは燃え、俺は善逸と共に瓦礫の下。
「ぐっ…!」
俺が抱き込んだ善逸は、瓦礫と俺の重さでくぐもった呻き声を上げ這い出ようともがいていた。
「やぁだ!お兄ちゃん止めてよ!あたし絶対、嫌だからね!」
上から堕姫の甲高い声が聞こえてくる。
瓦礫の上に、座ってでもいるのだろう。
「鬼になれば一瞬で強くなれるぜぇ!?不自由な肉体とは、おさらばだぁっ!」
鬼に勧誘しながらも、炭治郎を笑う妓夫太郎。
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春月是駒(プロフ) - すずめさん» ありがとうございます!書ききれるように、頑張ります! (12月9日 14時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - めっちゃ好きです…応援してます (12月9日 13時) (レス) @page45 id: 200c70ae26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年8月19日 18時