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「……星、綺麗だな。」
蝶屋敷の門前、横の壁に俺は背中を預けて空を見上げている。
空を見上げている理由?
チュン太郎を待ってたりする。
いや、チュン太郎"を"というよりチュン太郎"が"持ってくるであろう手紙を、なんだけど。
「…遊郭での戦いが終わってから、もう二ヶ月か。」
文字でのやり取りはしていても、それだけの期間俺は紫音に逢えていない。
任務が重なることも、道中すれ違う事も無かった。
「……逢いたいよ、紫音。」
ふと、俺は懐へ手を突っ込んだ。
そして、中から"ある物"を引っ張り出す。
紫水晶の根付け。
俺が任務復帰することになった時、紫音だと思ってって渡された物だ。
俺はこれがあったから、逢えなくても弱気な事を言わずになんとか任務をこなせたんだ。
右手で握りこんで、胸に当てる。
「紫音……」
「呼んだ?」
パッ、と顔を上げれば目の前に紫紺色の目と合った。
けど、すぐに違和感。
隊服なのに、いつも額に着けてる紫水晶の飾りがない。
「……なんか、足りなく無い?」
「え?」
「ほら、いつも着けてる紫水晶の…」
「あぁ、額当てね。……ないと、変?」
笑ってるけど、紫音は困った笑いで俺は首を横に振ってそれを否定する。
「良かった、変だって言われたら取りに戻るところだったよ。」
「変なわけないじゃん…あってもなくても、紫音は格好いいよ。」
「
紫音の左手が、俺の右頬を撫でる。
俺はそれに猫のように、目を細めて撫でられる。
「うん、大丈夫だよ…紫音がくれた、これのおかげだね。」
「それは良かった。」
それだけで紫音の手が離れると思っていたのに、違った。
離れるどころか、今度は指の背で頬を撫であげられる。
「んっ……」
「…善逸、今夜はどうするの?泊まるところ。」
「蝶屋敷に、泊まるつもりでいたよ。」
「……蕎麦屋、行かない?」
こんな時間に蕎麦屋?
やってないんじゃない?
そんな意味を込めて紫音の目を見れば、その奥に色欲が見えた。
え、そういう?
そういう事なの?
「……二階って、こと?」
「ん……善逸が
「帰んないでくれない?……そうしたいって思ってるの、紫音だけだと思わないで。」
離されそうになった手を、俺は左手で掴んでいた。
心臓バクバクして、まろび出そうだよ。
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春月是駒(プロフ) - すずめさん» ありがとうございます!書ききれるように、頑張ります! (12月9日 14時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - めっちゃ好きです…応援してます (12月9日 13時) (レス) @page45 id: 200c70ae26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年8月19日 18時