音の継子は我妻善逸に過保護3 (ページ15)

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湯浴みを済ませて涼みながら刀の手入れをしていると、チュン！、と可愛らしい鳴き声が聞こえてきた。
窓の襖を開ければ、そこにいるのは思った通りの雀。

｢お疲れ、うこぎ。｣

恋仲になってから互いが任務で離れ離れになった時、俺と善逸の間ではいつしか文通をするようになった。
内容は他愛もない事から始まり、鬼に対する愚痴や同じ任務だった隊士への愚痴だったり。
伊之助にどつかれた事、炭治郎が機能回復訓練を始めた事など、同期の話だったり。
そして、最後にはいつも小さく俺への愛が書かれている。

｢……うこぎ、食べて待ってて。｣

紫衣奈用の肉を少しうこぎに分けてやり、食べてもらっている間に善逸への返事を書く。
どんな任務だったか。
怪我の有無。
次いでに獪岳という雷の呼吸を使う隊士と合同任務だった事も。
一番最後には、恒例化しつつある善逸への愛を。

｢"愛してる、早く逢いたい"……誰宛かと思えば、善逸(カス)宛かよ。｣

突然の耳元での声に驚いた。
普段なら先に音で気付くから、驚くことはないのに。
俺の肩の後ろからにゅっ、と顔を出している獪岳の顔面を咄嗟に左手で覆った。

｢見ないでくれない？｣

｢減るもんじゃねぇんだし、いいだろ。｣

｢そういう問題じゃないんだけど？｣

ぐぐぐっ、と顔を押せば、痛い押すな！、と獪岳は抗議してくる。

｢お前、カスの恋人か？｣

｢だったら、何？｣

顔を引いてくれた獪岳から手を離し、俺は手早く書いた手紙をうこぎの足に括り付けた。
頼む、の意味を込めて頭を撫でれば、チュン！、と誇らしげに一鳴きして開けっ放しの窓から飛んで行った。

｢……他人(ひと)が持ってるものってほしくなるよな。カスなら、尚更。｣

｢I don't know what you're talking about.(ちょっと何言ってるか分からない。)｣

後ろの獪岳へ体正面を向けながら、そう異国語で言った。

｢よく見りゃ、お前顔良いし……俺のにならねぇ？｣

｢ならないよ。｣

｢即答かよ。……いいね、その方が余計に欲しくなるってもんだ。｣

そう言うなり獪岳は、体を屈めた。
俺の目に映ったのは、獪岳の目。
不覚にも、互いの唇は重なっていた。
そこに愛はもちろん、快も不快もない。

｢……突き放すくらい、したらどうだよ。｣

｢挨拶してるのに、それは失礼でしょ。｣

｢接吻が挨拶……イカれてんな。｣

｢普通だよ。｣

ニヒルに笑えば、余裕そうにしていた獪岳が赤くなっていた。