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久しぶりの音屋敷。
ガラガラ、と音を立てて戸を開けば、ぱたぱた、と中からまきをが小走りで現れた。
「紫音…おかえり。」
「ただいま、まきをさん。」
遊郭での戦い以来だった。
伊之助と共闘してる時に、加勢してくれた時のお礼も。
怪我はしていても、無事であったことに安心した事も。
あれから、誰にも伝えられずにいた。
「体、大丈夫?」
「平気だよ、これでも元くノ一だからね。」
どうってことないよ、と笑って言うまきをに、そっか、と言葉が漏れた。
───
師範が鬼殺隊を辞めた理由を、嫁三人衆に聞いてみた。
まきをには、さぁね、シラを切られ。
雛鶴には、うふふ、と笑われて何も言ってくれなかった。
須磨に壁ドンまでして迫っても、真っ赤な顔してあわあわされた挙句、通りかかった師範に拳を落とされた。
「お前なぁ…何回言えば分かるんだ?あいつらは、俺の嫁だって言ってんだろ。」
「知ってるよ、そんなこと。」
未だに痛む頭を擦りながら、目の前の隻腕隻眼の師範を見やる。
「で?……何、聞き出そうとしてた?」
「……師範の、鬼殺隊を辞めた理由。」
「身体的理由だ、隻眼隻腕でどうやって「そんな安直な理由じゃ、ないでしょ。」
毒耐性があり、病葉の術を使ってでも鬼を討った元忍の師範。
安易に想像出来る理由は、理由にならないと思っていた。
「……毒、抜けてないわけ?」
「いや?毒は禰豆子がしっかり焼いてくれたらしくてな、腕と目以外は大した事がない。」
「なら、どうして…」
「………恥ずかしいから言いたくねぇんだよ。」
視線を外して、師範はボソリ、と呟いた。
けれど、俺の耳にはしっかりと届いている。
「恥ずかしいって……生殖能力、なくしたとか?」
「はぁーーーーー!!??なんで、そういう想像になるんだよ!馬鹿か、お前っ!」
その反応を見て、どうやらそこが問題ではないことだけははっきりした。
「なら、理由は何?」
「…あいつらと約束したんだよ、上弦倒したら退いて静かに暮らそうって。」
「
もっと私利私欲に塗れた理由かと思っていたら、違った。
雛鶴、まきを、須磨の三人たってのお願いなんだと思ったら、口角が上がっていた。
「笑うなよ。」
「安心したんだよ、くだらない理由かと思ってたから。」
「あーもーっ!ほんっと、可愛くねぇよなお前!」
「嫁三人衆に言ってやりなよ。」
ブスくれる師範は、初めてかもしれない。
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春月是駒(プロフ) - すずめさん» ありがとうございます!書ききれるように、頑張ります! (12月9日 14時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - めっちゃ好きです…応援してます (12月9日 13時) (レス) @page45 id: 200c70ae26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年8月19日 18時