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「ここへ座るといい。」

煉獄がそう言いながら、自分の隣の座面をぽふぽふ、と叩いて炭治郎を促した。


「炭治郎、俺たちはあっちに座るから。」

「あ、はい。善逸と伊之助をお願いします。」


その頼みを了承して、俺は後輩二人と共に通路を挟んだ反対側の煉獄たちから斜め後ろの座席に座った。
窓側がいいと楽しげな伊之助を奥に座らせ、隣に善逸。
その真向かいに、俺が座った。


「すげぇ!主の中すっげぇ!」


初めて乗った列車に興奮しっぱなしの伊之助は、バンバン、と窓ガラスを叩いている。
善逸も引いて見ていたが流石にガラスが割れては大変な為、猪頭を引っ付かんだ。


「割れるだろ、窓ガラス!」

「伊之助、少し落ち着きなよ。」


そんな伊之助に、既視感を覚えた。
まるで、今の伊之助は初めて船に乗った時の俺で注意する俺と善逸はさながら当時の両親のようだった。
懐かしい記憶に、思わず苦笑い。


「紫音たちはどうしてここにいる。任務か?」

「鎹梟の紫衣奈から、被害拡大の為杏寿郎と合流せよって言われてね。」

「うむ、そういうことか。承知した!」

「それと……煉獄さんに、聞きたいことがあって。」


言いにくそうに炭治郎が、そう続けた。
目の前で繰り広げられている善逸と伊之助の攻防を眺める。


「なんだ、言ってみろ。」

「俺の父のことですが……」


聞き耳を立てている訳でもないが、なまじ耳が良いせいで入ってきてしまう二人の会話。


「君の父がどうした?」

「病弱だったんですけど……」

「紫音!ちょっとは、手伝ってくれないかなっ!?」

「伊之助、善逸困ってるから止めてくれる?」


観戦していたら善逸から苦情が入った為、俺も伊之助に一応チクリ、と注意した。
だが、さすがは伊之助。
野生児はそれだけで、止まるはずが無かった。


「雪の中で、神楽を踊れて……」

「それは良かった!」

「その!」

「なんだ!」


急に二人の声が大きくなって、俺は堪らず右耳を押さえた。


「紫音?どうしたの?」

「いや……杏寿郎たち(二人)の声が耳に刺さっただけだよ。」

「聞き耳立てるから…」

「立ててないよ。」


聞きたくなくても聞こえてくるのは、善逸も分かる事だからあえて言わない。


「うむ……だが知らん!」

「え!?」

「ヒノカミ神楽という言葉も、初耳だ。君の父がやっていた神楽が、戦いに応用出来たのは実にめでたいが…この話はこれでおしまいだな!」

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時

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