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車両内に入るなり、伊之助が近くの車窓へ引き寄せられた。
その席に座る乗客に、善逸が謝り俺が伊之助を通路へ引っ張り出す。


「柱、だっけ?その煉獄さん。顔とかちゃんと分かるのか?」

「派手な髪の人だったし、匂いもちゃんと覚えているから。」


車窓に近づこうとする伊之助を引きずるようにしながら、俺は炭治郎たちの後ろを歩いていた。
案の定、鼻息荒く車窓に近づこうとするものだから、急いで掴んでいた隊服のズボンの腰を引っ張った。


「近づけばわかると思う。」


そう言って炭治郎は、目の前の扉に手をかけ開けた。


「美味いっ!!」


列車の窓ガラスを揺らす程の声に、善逸は青ざめ俺は片目を瞑り右耳を抑えた。
前へ前へ進めば進むほど、まるでここにいると主張するかのような声。
すぐ後ろまで近づいた時、まるで炎を彷彿させる髪色の男が弁当を食べていた。


「あの人が…炎柱?」

「うん…」

「ただの食いしん坊じゃなくて?」

「うん…」


一口食べては美味い、と繰り返す光景を見ながら善逸が炭治郎に耳打ちしている。
声をかけなければ、と思ったのか炭治郎は善逸を背中に引っつけたまま近づいて行った。


「あのぉ…すみません…」

「美味いっ!」

「煉獄さん…っ。」

「美味いっ!」


そう言いながら振り返った男と、俺は目が合った。


「うん、それは凄く分かったよ。杏寿郎。」

「紫音!息災な様だな!」

「一応ね…てか、食べ過ぎ。」


呆れる俺と、未だに食べ続ける煉獄を見て知り合いですか?、と炭治郎が聞いてきた。


「俺の師範が仲良くて、同い年ってこともあってオトモダチしてるってだけだよ。」

「うむ、紫音は俺の大事な(・・・)友だ。」


そう言ってフッ、と笑う煉獄に、俺はニヒルな笑みを返す。
そのやり取りを見て善逸が、俺を振り返った。
眉尻を下げて見てくるたんぽぽの不安の音を、この時俺は鬼や任務に対する不安だと思っていた。


「して…そういう君は、お館様の時の。」

「はい!竈門炭治郎です。」


名乗った炭治郎は、善逸と伊之助も紹介した。


「そうか。それで、その箱に入っているのが…」

「はい、妹の禰豆子です。」

「うむ!あの時の鬼だな。お館様がお認めになったこと…今は、何も言うまい。」


煉獄の言葉で、禰豆子の存在は容認されたのだ、とこの時初めて知った。
その言葉に、炭治郎はあからさまにホッ、としていた。

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時

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