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「…お前、ずっと寝てた方がいいんじゃねぇか?」
戦闘の事を考えれば、伊之助が善逸に寝たままでいて欲しいと思うのは分かる。
けれど、それだと俺が困る。
「あの子も鬼殺隊!?なんであんな頓珍漢な格好してるの!」
「分かんないです!紫音くん、分かりますか!?」
「京極屋に潜入してたから…って、伊之助?善逸、蹴るの止めて。」
霹靂一閃・六連を出した後に着地した善逸を、伊之助はオラ!オラ!と何時かのことを彷彿させるように蹴っている。
それを俺は、善逸に当たる前に蹴って軌道を逸らす。
そんなことをしていると、俺が開けた穴から爆音が聞こえてきた。
その場にいるみんなの視線が、天井へと向けられる。
「風……?風穴が開いたの!?地上から何をしたら、ここまで穴を開けられるのよ!」
「何だぁ!?」
「いる……誰か、入ってきた……!」
天井が落とされた事で立ち込める土煙の中、俺と同じ呼吸音を耳が捉えた。
爆音が轟いた時点で、俺は誰が来たのか分かっていたけど。
「
俺の呟きは、師範の攻撃によって起こされた風に消えていった。
俺たちの頭上にあった帯が斬られ、拘束されていた遊女たちが解放された。
「天元様…」
「うわぁぁぁ……っ!」
「まきを、須磨……遅れて悪かったな。元気そうで一安心だ。」
首だけで振り返った師範は、嫁が生きていたことから安堵したのか不敵な笑みを見せる。
そのまま体も須磨たちへ向け、歩み寄り右手で二人の頭をぽふん、ぽふん、と一つずつ撫でた。
「派手にやってたようだな。さすが、俺の女房だ。」
そう言われた二人は、目に涙を浮かべている。
須磨に関しては、ぐずぐず、と泣き出していた。
「腹が立つ。」
「寝ててもブレないね、善逸。」
「当たり前だ、あんなの納得なんか出来ない。」
「俺がいるのに?」
「それと、これは別問題だ紫音。」
目を閉じおかめな顔のままの善逸は、真剣にそう俺に言ってきた。
「よぉしっ!」
師範は刀をブンブン振り回して、両手に納める。
「こっからは、ド派手に行くぜ!」
その言葉に、これ以上派手になるのか、と俺は呆れを抱くと同時にそれでこそ師範だ、とも思った。
「紫音、お前も本気出せよ?派手にな!」
「俺は地味でいいって……」
苦笑いを師範に向けた俺だけど、上弦の鬼ならばド派手に本気を出さないと生き残れないのは分かっているつもりだ。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時