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様子を伺っていたのか、ボーッとしている蚯蚓帯の顔があるところへ伊之助が斬りかかった。
｢斬れねぇっ！｣
｢柔軟性があるからだ！｣
｢わーってる！んなことっ！｣
一度宙で手放した刀を、伊之助は着地してからしっかりと手の内へ納めた。
｢獣の呼吸 陸ノ牙、乱杭咬みぃっ！｣
｢あたしを斬ったっても意味ないわよ？本体じゃないし。｣
その言葉に、伊之助の刃の勢いが止まった。
｢それより…せっかく救えた奴らが疎かだけどいいのかい？｣
帯に囚われていた遊女たちを、伊之助が振り返る。
｢あんたにやられた分は、すぐに取り戻せるんだよ？｣
地に伏したまま無防備な遊女たちへ、帯が伸びていく。
守らなければならない、と思考が働いたのか、伊之助が遊女たちへと駆け出す。
｢間に合わねぇっ！蚯蚓帯がぁっ！｣
だが、それを俺は一閃する。
それと同時に、帯にはくないが突き刺さっていた。
｢むらさきっ！？はっ！！？｣
｢後ろは任せて。｣
｢蚯蚓帯とは上手いこと言うもんだ！｣
｢ホント気持ち悪いです！ホントその通りです！天元様に言いつけてやります！｣
そう言って俺たちは、駆け出す。
その走りは、か弱い女の走りではなく戦い慣れしたくノ一の走りだった。
｢あたしたちも加勢するから！頑張りな、猪頭！｣
｢うきゃぁぁぁぁああっ！｣
｢誰だてめぇら！｣
｢宇髄の妻です！あたし、あんまり戦えないですからぁっ！｣
悲鳴をあげながら、蚯蚓帯の攻撃を頭を伏せて躱す須磨。
｢期待しないでくださいねぇ！？｣
そんな須磨を、まきをが背中を叩いて檄を飛ばす。
｢須磨ぁ！弱気なことを言うんじゃない！｣
俺には見慣れたいつものやり取りだけど、伊之助にとっては初めての光景に度肝を抜かれてドン引いていた。
｢……なんなんだ、あいつら。｣
｢Haha……｣
｢いやぁぁ！だってだって！まきをさん、あたしがみそっかすなの知ってますよねぇ！？すぐ捕まったし、無茶ですよぉ！捕まってる人、みんな守りきるのはぁ！！あたし一番に死にそうですもんっ！｣
｢そうさよく分かってるねぇ…さぁ、どれから食おうか。｣
｢させないよ、そんなこと。｣
俺はやっと、善逸を帯から解放する事が出来た。
片腕で抱き止めた善逸は、人間としての機能が戻ると眠ったまま前傾姿勢をとった。
｢紫音、ありがとう。｣
｢善逸…遅れて
そう言葉を交わし、俺も善逸も一閃を六回繰り出した。
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年6月11日 22時
