検索窓
今日:9 hit、昨日:67 hit、合計:4,129 hit

82 ページ42

「……どうやら、そうらしいな。感触的に言っても、生きてる人間だ。女の腹巻の中に、捕まえた人間を閉じ込めておくのか。」

「"帯"って言うんだよ。」

「…知ってる(・・・・)!」


知らなかった事を隠すように強がる伊之助だったが、足元から鳴った乾いた音に立ち止まり視線を落とした。
俺も止まって、視線は真逆の吊るされた帯へと向けていた。


「骨、でしょ。」

「あぁ……ちっ!好きな時に出して、食うのかよ。」

do something nasty…(えげつない事をする…)

「むらさき語喋んなよ。」


俺の喋る異国語を、伊之助は独自の言語だと認識したらしくそれに思わずぷっ、と口から空気が漏れ出た。


「笑うなよ、緊張感ねぇヤツだな。」

「ぷふっ……笑ってないよ。」

「説得力ねぇんだよ、お前。」

「あ……」

「あ?」


そんなやり取りをしてる最中に、俺は見つけた。


「善逸……!」

「何してんだ、こいつ。」

「お前たちが何をしているんだよ。」


第三者の声に、俺と伊之助は咄嗟に振り返った。
俺は、何時でも攻撃に移れるように刀の柄に手を添える。


「他所様の食料庫に入りやがって。汚い……汚いねぇ!汚いっ、臭いっ!糞虫共がぁっ!」

「なんだこの蚯蚓!キモォッ!」

「この…糞虫共めぇぇぇ!!」


伊之助が煽ったからなのか、食料庫へ無断に侵入されたからなのか、目の前の鬼の音がする帯の様な蚯蚓……蚯蚓の様な帯はあらゆる方向から攻撃をしてきた。


「グネグネグネグネっ……気持ち悪ぃんだよ蚯蚓帯ぃ!」

「伊之助!息吐くように鬼を煽らないでくれないっ?」


一つ、二つ、三つ、と斬り伏せる。
四つ、五つ、と躱して斬って受け流す。
六つ目の攻撃を、伊之助は逆さで宙に浮いたのままその場で回転し斬り伏せた。


「動きが鈍いぜぇ!?欲張って人間を取り込み過ぎてんだぁ!でっぷり肥えた蚯蚓の攻撃なんぞぉ!伊之助様には当たりゃしねぇ!ケツまくって、出直してきなぁっ!」

「首洗って出直せ、じゃないの……っ?」


蚯蚓帯の攻撃を斬り伏せたりしながらも、伊之助も俺も人が拘束されている部分を避けて斬っていた。


「チッ!勘の鋭い糞虫だねぇ……!」

「伊之助!」

「だから当たりゃしねぇんだよっ!」


前後左右からの攻撃でさえも、伊之助は意図も簡単に躱し帯を斬っていく。
山育ちの野生児たる所以か、と思わず口笛を吹きそうになった。

83→←81



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.8/10 (4 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
5人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。