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「……どうやら、そうらしいな。感触的に言っても、生きてる人間だ。女の腹巻の中に、捕まえた人間を閉じ込めておくのか。」
「"帯"って言うんだよ。」
「…
知らなかった事を隠すように強がる伊之助だったが、足元から鳴った乾いた音に立ち止まり視線を落とした。
俺も止まって、視線は真逆の吊るされた帯へと向けていた。
「骨、でしょ。」
「あぁ……ちっ!好きな時に出して、食うのかよ。」
「
「むらさき語喋んなよ。」
俺の喋る異国語を、伊之助は独自の言語だと認識したらしくそれに思わずぷっ、と口から空気が漏れ出た。
「笑うなよ、緊張感ねぇヤツだな。」
「ぷふっ……笑ってないよ。」
「説得力ねぇんだよ、お前。」
「あ……」
「あ?」
そんなやり取りをしてる最中に、俺は見つけた。
「善逸……!」
「何してんだ、こいつ。」
「お前たちが何をしているんだよ。」
第三者の声に、俺と伊之助は咄嗟に振り返った。
俺は、何時でも攻撃に移れるように刀の柄に手を添える。
「他所様の食料庫に入りやがって。汚い……汚いねぇ!汚いっ、臭いっ!糞虫共がぁっ!」
「なんだこの蚯蚓!キモォッ!」
「この…糞虫共めぇぇぇ!!」
伊之助が煽ったからなのか、食料庫へ無断に侵入されたからなのか、目の前の鬼の音がする帯の様な蚯蚓……蚯蚓の様な帯はあらゆる方向から攻撃をしてきた。
「グネグネグネグネっ……気持ち悪ぃんだよ蚯蚓帯ぃ!」
「伊之助!息吐くように鬼を煽らないでくれないっ?」
一つ、二つ、三つ、と斬り伏せる。
四つ、五つ、と躱して斬って受け流す。
六つ目の攻撃を、伊之助は逆さで宙に浮いたのままその場で回転し斬り伏せた。
「動きが鈍いぜぇ!?欲張って人間を取り込み過ぎてんだぁ!でっぷり肥えた蚯蚓の攻撃なんぞぉ!伊之助様には当たりゃしねぇ!ケツまくって、出直してきなぁっ!」
「首洗って出直せ、じゃないの……っ?」
蚯蚓帯の攻撃を斬り伏せたりしながらも、伊之助も俺も人が拘束されている部分を避けて斬っていた。
「チッ!勘の鋭い糞虫だねぇ……!」
「伊之助!」
「だから当たりゃしねぇんだよっ!」
前後左右からの攻撃でさえも、伊之助は意図も簡単に躱し帯を斬っていく。
山育ちの野生児たる所以か、と思わず口笛を吹きそうになった。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時