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人の集団に交わり、集団の視線の先を見やればそこには派手に着飾った花魁がシャナリシャナリ、とゆっくりと歩いていた。


「あれは"花魁道中"だな。ときと屋の鯉夏花魁だ。一番位の高い遊女が、客を迎えに行ってんだよ。」

「にしても、派手だね。」

「嫁ぇぇっ!?もしや嫁ですかぁぁぁ!?あの美女が嫁なのぉぉぉっ!?あんまりだよ!三人もいるの!?みんなあんな美女っすかぁぁぁ!?」

「嫁じゃねぇよっ!!」


喧しくなった善逸に、師範は右ストレートを打ち込もうとするのを俺の手のひらで妨害する。


「師範、駄目。」

「離せ!殴らせろっ!」

「だから、駄目だって……!」


押し通そうとする師範の拳を、ギュゥゥウッ、と力任せに俺は握った。


「歩くの(おっそ)。山の中にいたら、すぐ殺 されるぞ。」


しゃがんでそう呟いていた伊之助は、突然女に連れられて師範の下へと戻ってきた。


「ちょいと旦那ぁ?この子は、うちで引き取らせてもらうよ?いいかい?」


声をかけられた師範が振り返ると、そこにいたのは荻本屋のやり手だった。


「荻本屋さんの方から目ぇつけてもらえるとは、こりゃ有難い!けど、どういう風の吹き回しだい?」

「なぁに、あたしの目に狂いはないのさ。」


そのやり取りの後、伊之助は荻本屋のやり手に連れられて行く。


「達者でな、猪子ぉ。」


俺たちを振り返っている伊之助に、ゆるゆる、と手を振り見送った。
それから師範の視線は、じとり、と善逸に注がれた。


「ったく…売れ残ってんじゃねぇよ。」

「安心して、善逸。その時は俺が幸せにするから。」

「そういう問題じゃねぇ……よっ!」

「痛っ!!」


ゴツッ、と俺の頭へ鈍い音を立てて師範の拳が落とされた。


「離れんなよー?」

「え、まだどこか行くの……?」

「京極屋だ。」


師範が鬼がいると絞り込んだ三件のうちの最後の一件、京極屋。
俺は殴られた頭を左手で擦りながら、右手は善逸のそれを絡めとった。
絡めとった指先が、ピクン、と跳ねる。


「ちょっ……!?」

「ほら、離れたら師範(旦那)が煩いから歩いて歩いて。」


心に無いことを口にして、善逸を潜入先へと連れていく。
何事もなく、俺の下へ戻ってくることを願うのは師範に申し訳ないが願わずにはいられなかった。

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時

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