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仕度を終えた炭治郎、伊之助、善逸を従えて、師範と俺は遊郭の通りを歩く。
俺も師範も、三人に合わせるように地味に変装している。
「ね、紫音…すんごい見られてるんだけど!?」
「うん、そうだね。……善逸が可愛いってバレちゃってるのかな?」
「安心しなよ、紫音。それはないから。」
俺の言葉を冷静に一蹴する善逸。
あちこちから注がれる視線は、老若男女問わず師範に向けられている。
「……どこが地味なのか切に教えて欲しいな。」
「目立ってるの、紫音もだからね?」
「
ないよそんなこと、と思いながら周りへ視線を流して見ていると、一人の女と目が合いその女は頬を赤らめた。
「ほら、今の女の人。紫音の事見て赤くなってる。」
「本当だね、けど興味無いよ。俺には、善逸がいるからね。」
「……馬ぁ鹿。」
唇を尖らせて俯いて照れる善逸に、俺の心臓は鷲づかまれた。
音の乱れを征する様に、俺は右手を左胸へ当て眉間に皺を寄せていたら、大丈夫?、と善逸に心配された。
「
───
師範が最初に訪れたのは、須磨を潜入させたときと屋だった。
三人の顔を見て、遠慮していた主人たちだったが師範が微笑むと女将がそれに絆されて炭治郎が引き取られた。
「ホンットに駄目だな、お前らは!二束三文でしか売れねぇじゃねぇか。」
「売り込みの仕方、間違ってるからだと思うけど?」
「あ?」
師範に睨まれるが、俺はあらぬ方に視線を向けてカラコロカラコロ、下駄を鳴らして歩く。
「俺、貴方とは口聞かないんで。」
善逸の吐き出されたため息には、雷の音が含まれていた。
「女装させたからキレてんのかぁ?なんでも言うこと聞くって言っただろうが!」
「……違うと思うよ、師範。ね、善逸?」
隣の善逸へ視線を向ければ、こくり、と縦に動いたタンポポ頭。
はぁ?、と首を傾げる師範に、内心俺は頭を抱えた。
「おい!なんかあの辺、人間がうじゃこら集まってんぞ!」
いつの間にかに離れていた伊之助がそう言って、そっちへ駆けていく。
それを追うように、善逸もパタパタ、とかけ出す。
「うじゃこらって……」
「おい、勝手に動くんじゃねぇって!」
遅れて俺と師範も、二人を追った。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時