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善逸を庇う俺の背中に、師範は容赦なく拳を叩きつけてくる。
当たる瞬間は、さすがの俺も眉根を寄せて痛みに反応していた。
その傍らで、怒らせるとまずいことを知ったのか、伊之助が脱いでいた猪頭をスポン、と被った。
炭治郎も、なんとも言い難い表情を見せている。
「なんか文句、あるか?」
ある、と言えばことは進まない。
その事を危惧して、頷きそうになっていた善逸の頭を俺は抱き込む形で動きを止めさせた。
「
「日本語話せって、この野郎。」
「
日本語要求してくる師範に、あえて俺は異国語で返し煽れば二個、三個とこめかみの青筋が増えたのはおそらく見間違いであろう。
「あのっ……手紙で、"来る時は極力目立たぬ様に"と何度も念押ししてあるんですが…」
「だから、そう言っただろうが……っ!」
確かに言ってはいた。
だが、嫁三人衆も大概分かってないようだ。
派手な師範に、目立たないという概念はない。
なんせ、存在自体が既に派手なのだから。
天は二物を与えず、とよく言うが、
「師範、具体的にどうするの?まさか、客として女買わせる訳じゃないよね?」
「アホか、それはもう俺がやってきてんだよ。」
「……嫁三人もいるのに、堂々と浮気かよ。」
「聞こえてるぞ、クソガキ!……そりゃまぁ、変装よ。不本意だが……
変装。
ふーん、と俺は興味なさげに音を返したが、はたとして思考が止まった。
誰が……変装するんだ?
「安心しろ、お前には行かせねぇよ。つか、無理だな。この天元様程じゃないが、お前もそれなりに顔が良い。それに、その体。……女装出来ねぇだろ。」
「そう、良かった……じゃないよ、なら誰が変装するわけ?まさかぜ「そのまさかだ。」
善逸とか言わないよね、と続くはずだった言葉は、それを肯定する言葉で遮られた。
「
「潜入させるのに、女の隊士が必要だったのをお前らが止めたんだからな?なら、それをやってもらうしかないだろう。」
「
そう吐き捨てるが、時すでに遅し、とはこの事である。
抱きしめている善逸が、少し不安気に俺を見ていた。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時