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中に入れば、一室へ案内され師範は窓際の卓前に腰を下ろした。
卓に肘をつけ、こちらへ半身向けている。
「いいか、聞け。遊郭に潜入したら、まず俺の嫁を探せ。俺も鬼の情報を探るから。」
饅頭を頬張る伊之助、お茶飲む炭治郎、立ったまま壁に寄りかかり腕組みして話を聞く俺。
説明にしては、色々簡略された説明をした師範に感情剥き出しで噛み付いたのは言うまでもなく、女の子大好きな善逸だった。
「とんでもねぇ話だぁっ!!」
「あぁ?」
「ふざけないでいただきたいっ!自分の個人的な嫁探しにっ、部下を使うとはっ!」
「はぁ!?」
……至って普通だよね。
俺も最初の頃、はぁ?、って聞き返したし。
自前の爆薬丸で、爆ぜればいいのに。
「おいっ!全部口に出てんだよ、クソ弟子!何、話蒸し返してんだ!?コラァッ!」
「
「
「いいやっ!言わせてもらおうっ!」
善逸を止めようとする炭治郎を見ながら、俺はいいぞ善逸もっと言ってやれ、と内心エールを送っていた。
「あんたみたいに奇妙奇天烈な奴はモテないでしょうともっ!だが、しかし!鬼殺隊員である俺たちを、あんた嫁が欲しいからってぇぇ!」
「馬鹿かてめぇっ!俺の嫁が遊郭に潜入して、鬼の情報収集に励んでんだよっ!定期連絡が途絶えたからっ、俺も行くんだっての!」
「……ソウイウモウソウヲシテイラッシャルンデショ。」
「フッ……」
「クソガキがっ!」
カタコトで師範を煽る善逸に、俺は思わず吹き出した。
それも気に入らなかったらしく、師範はこれでもくらえ!とばかりに嫁三人衆から送られてきていた手紙の束を善逸へと投げつけた。
「これが、鴉経由で届いた手紙だ。」
「随分多いですね。かなり長い間、潜入されてるんですか?」
単純な疑問だったのだろう。
いや、それが普通。
そう、普通の反応なのだ。
「三人いるからな、嫁。」
「三人…?嫁…?三……三!?てめぇっ!てめぇぇぇ!」
誰が嫁が三人いると想像出来るだろうか。
日本の一夫多妻制度は、とっくの昔になくなっているのだから。
「なんで嫁三人もいんだよぉぉぉっ!ふざっけんなよぉぉぉっ!」
叫ぶ善逸に迫る師範の左手の拳。
目指すのは善逸の腹であろうそれを、俺は善逸を抱き寄せて阻止した。
「やりすぎ、師範。」
「殴らせろ、紫音!腹が立つ!」
「させない。」
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時