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師範の地獄の機能回復訓練が始まって、今日でふた月と二週間が経った。
そう、俺の体から人面蜘蛛の毒が抜け切り元の大きさに戻っている。
その間、善逸は伊之助と一緒に遅れを取り戻すように機能回復訓練に参加する様になっていた。
炭治郎も常中が出来るようになってからは、しのぶの継子の栗花落カナヲ相手でもなんなく立ち回れるようになったらしい。
「常中ってどうやるんですか!?」
出来なかった時に、そうやって炭治郎に詰め寄られたのは記憶に新しい。
その炭治郎に習ってか、善逸と伊之助も常中を覚えたようだった。
三ヶ月ぶりの隊服に着替えてると、善逸が俺を見つめていた。
「善逸、視線が熱いよ?」
「あ…ご、ごめん…分かってはいたけど、筋肉凄いなって……」
袖無しの隊服を、羽織っただけで釦を止めていないため六つに割れた腹と、それなりに隆起している俺の胸筋。
「…触る?」
「え…いい、の?」
「いいよ?その先の保証は、しないけど…ね?」
そう言って、目を細めれば善逸は真っ赤になった。
凄い、音も乱れてる。
「善逸?顔真っ赤だけど…何想像したの?」
「い…言えるかっ!」
「言えないこと、想像したんだね……
「い、今のはさすがに分かったぞ!やらしくないからな!至って健全だぜ!」
真っ赤な顔して言い訳並べる善逸が面白くて、クスッ、と笑いが漏れた。
それにまた噛み付いてくる善逸。
……毎日こんな日常ならいいのにね。
「紫音、良クナッタカシラ?」
俺たち鬼殺隊の日常は、むしろこっちだけどね。
幸せな日常は、俺たちにとっては非日常。
「紫衣奈、見ての通りだよ。」
「ソレハ何ヨリ。ソレヨリ紫音、任務ヨ。」
「単身?」
「合同。竈門炭治郎、嘴平伊之助、我妻善逸、鏡月紫音ノ四名ハ、無限列車ヘ。炎柱・煉獄杏寿郎ト合流セヨ。」
紫衣奈の言葉に、俺はもちろん、炭治郎も伊之助も善逸も一羽の梟に集中した。
「だって。」
「心シテ掛カリナサイ。」
釦をとめ、額当てをつけて刀を背負う。
「行きたくないよ〜!次こそ、俺死んじゃうよ〜!」
「死なない、死なせない。守るって言ってるじゃん。」
「善逸!何のために鍛錬したんだ、自信を持って!強くなってるから!」
「ごちゃごちゃうるせぇぞ!!行くぞっ、子分共!」
「なった覚えないから。」
日常が帰ってきた。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時