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「いいか?俺は神だ!お前らは、ゴミだ!」
師範は俺が未だ不服そうに見ているのもお構い無しに、三人へ話し始めた。
「まず最初はそれをしっかり頭に叩き込め!ねじ込め!俺が犬になれと言ったら犬になり!猿になれと言ったら猿になれ!猫背で揉み手をしながら、常に俺の機嫌を伺い!全身全霊で媚びへつらうのだ!」
鬼殺隊を目指すと言った俺にも、師範は同じことを言ってたなと思い出す。
その通りにしたか、と聞かれれば答えは否だ。
おかげで師範からは、図体もデカイが態度もデカくて可愛げがない、と毎度言われている。
「そして、もう一度言う。俺は神だ!」
ドヤ顔師範に、ドン引く善逸、小首を傾げる炭治郎。
俺は俺で、またか、と呆れていた。
そんな中、炭治郎が手を挙げた。
何かと思えば、何を司る神なのか、と質問している。
その炭治郎にでさえ、善逸は引いている。
「とんでもねぇ奴だ…」
漏れ出た善逸の言葉に、俺は人差し指を口元に立てて黙らせる。
「いい質問だ!」
どこが、だ。
任務に関しての質問ならまだしも、何を司る神なんて殊更どうでもいいだろう。
そんな俺の思いを知らずに、師範は見込みがある奴、と炭治郎を褒めていた。
「派手を司る神……祭りの神だ。」
「アホ司ってるな、間違いなく。」
「
俺と善逸。
見合って、苦笑うしかなかった。
変わってるとは思っていたが、俺の師範がここまで極まっていたとはさすがに知らなんだ。
呆れる俺たちを他所に、伊之助までもが訳の分からないことを言い出した。
「俺は山の王だ。よろしくな、祭りの神!」
「………何言ってんだ、お前。気持ち悪ぃ奴だな!」
「なんだと?てめぇっ!」
「……キモイ。」
同類なのに反発し合う二人。
類は友を呼ぶ、とは言うものの、どうやら同族嫌悪というやつらしい。
「大変だね、あんなのがお師匠さんだなんて……」
「面倒みはいいよ、あんなだけどね?」
いがみ合う二人を見ながら、俺はそう善逸へ返した。
そうでなければ、俺がここにいないと思ったから。
「っと、遊んでる暇はねぇんだわ。行くぞ、着いてこい。」
そう言ったと思った矢先、師範の背中は胡麻のように小さくなっていた。
消えたと驚く善逸の隣で、小さくなった背中を指し示す。
これ以上離され、置いていかれるのはまずい、と思った俺たちは慌ててその背中を追いかけた。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時