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炭治郎の物理的にもお堅い頭突きで伸された槇寿郎を、三人のうち一番体が大きいからという理由で俺が運ぶことになった。
「
「すみません…鏡月さん…運んでもらってしまって……」
「
「あ、あの……申し訳ないのですが、い、異国語は…」
眉尻を下げて本当に申し訳なさそうに千寿郎がそう言ってくるが、その台詞は俺の台詞だろう。
瞬発的に出てしまうから申し訳ないが、直そうとはしない。
「炭治郎が父君を伸してしまって、ごめん。」
「あ…いえっ、不謹慎かもしれませんが……炭治郎さんがああ言ってくれてなんていうか…」
「スカッ、と…した?」
「はい…俺は、父上に言い返すことも出来なかったので…」
俯いて自嘲する千寿郎に、保護欲が湧かなくもない。
こちらに、と千寿郎が開けた襖の部屋へ槇寿郎を運び入れ敷かれたままの布団へと下ろす。
似て非なる髪色を見て、これが善逸だったら、と邪な思考が過ぎる。
それと同時に戻ったらしのぶ以上に、善逸のほうが厄介かもしれない、とも思った。
「それで…鏡月さんは、何用で?」
「ん…杏寿郎とね、約束したんだ。任務が終わったら、笛を聴かせてって。……仏前で、吹いてもいい?」
「ぜひっ!兄も、きっと喜びます!兄は…鏡月さんの奏でる笛が、本当に好きでしたから……」
煉獄と俺が出会ってからこれまでの中で、千寿郎は一番ではないかという程に笑んで演奏の許可を出してくれた。
炭治郎の下へ行く千寿郎に、ついでだから、と仏間へと案内された。
仏壇には、立派な仏花が供えられ煉獄の好物だったさつまいも料理もあった。
「…わっしょい、してるの?」
線香をあげ、おりんを鳴らし手を合わせたあとにそう言った。
幼い頃に亡くした母のものであろう位牌と並ぶ、煉獄の位牌。
「…来るの遅れて、
生前、煉獄が好きだった曲にするか。
はたまた、煉獄の魂が安眠出来るような
なんだったら、千寿郎に何がいいか聞いておくべきだったな、と今更後悔。
「ん…じゃあ、君を想って適当に音並べることにしよう。」
息を吸って、唇へ笛を宛てがう。
一音一音、大事に吹けば音たちは煉獄の様な炎を連想させる旋律になった。
ありがとう
さようなら
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時