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調理場でお饅頭を作ってるアオイさんの背後で、俺は身代わりまで用意してそれと本物とすり替える。
身代わりを置く際にアオイさんが振り返った時は、一瞬肝が冷えたのは嘘じゃない。
何故、俺がお饅頭をくすねてきたかと言えば前の任務で、俺たちは目の前で炎柱の煉獄さんを失った。
と、言っても、俺と紫音はその場にいなかったんだけど。
炭治郎と伊之助は、目の前でその瞬間を迎えてるからか落ち込みが半端じゃなかった。
まぁ、伊之助の場合は、それをバネに修行だー!、とか言ってたけど。
今回のことで、炭治郎でも落ち込んだり駄目かもしれない、って思っちゃうことがあるんだ、と知った。
「そりゃそうだよな…煉獄さんみたいな鍛え抜かれた音がする人でさえ、死んじゃったんだから。悲しいし、取り乱すよな…」
確かに、落ち込みが半端ない炭治郎は心配だった。
けど、それ以上に心配してるのは…紫音だ。
友達、と言っていた煉獄さんの死を目の当たりにしても涙の一つも流さなかった。
あの伊之助でさえ、ギャン泣きだったって言うのに。
「大丈夫かな、紫音…」
いつもいつも、泣いて助けを求める俺が言えた口じゃないのは分かってる。
けど、友達が亡くなった時くらいは泣いたっていいと思うんだ。
大事にされるのは嬉しいけど、たまには甘えてほしい、とも思う。
「煉獄さん…ちょっと風変わりな人だったけど、強くて優しい音、だったな。……紫音と似てるんだよな、音。」
友達だから、音も似るのかな。
そんな鬱々とした考えを吹き飛ばすように、俺は一つ大きく息をついて使わせてもらってる病室へと入った。
「炭治郎、紫音!こっそり饅頭貰ってきたから、食おうぜ!」
「あぁっ!!炭治郎さんと鏡月さんが、いませぇぇんっ!」
そう言った途端、きよちゃんの後頭部が俺の鼻へ。
そりゃもう盛大に。
鼻血吹き出しながら後ろへ倒れる俺は、きよちゃんから衝撃の事実を聞かされた。
「あぁっ!善逸さんっ!?ごめんなさい!」
「いやぁ?全然、大丈夫!」
とは言うものの、俺の鼻からは血が。
視界はグルングルン、回ってる。
「どしたのぉ?」
「焦点が全然大丈夫じゃないですっ!」
きよちゃんは、俺の処置をしながら炭治郎と紫音がいないこと、炭治郎が既に鍛錬をしていること、しのぶさんがお怒りなことを教えてくれた。
「腹の傷かなり深かったんだよね!?馬鹿なの!?って、紫音も!?」
何だか、心がザワついた。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時