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あれから俺たちは、隠によって蝶屋敷へ運ばれた。
別段、俺は怪我はしてなかったが三人は怪我をしていた。
炭治郎、伊之助は、無限列車での下弦の鬼との戦闘で、だが。
善逸も、無限列車で。
どうやら、俺が守り切れてなったらしい。
自分の弱さに嘆いている俺の背後で、炭治郎が病衣から隊服へと着替えていた。
「…どこ行くの、
「…煉獄さんの、生家へ。」
ふーん、と聞いておきながらも、俺の口からは興味なさげな音が漏れた。
「煉獄さんの、最期の言葉……伝えに行かないと、ならないので。」
「…しのぶに怒られるよ?」
「それでも、行かないと…いけないので。」
あ、そう。
───
それで終わりのはずだった。
けど、今俺は炭治郎と共に煉獄家へと走っていた。
「良かったんですか…?鏡月さん…」
「…君に何かあれば、善逸が悲しむでしょ。俺が杏寿郎とお別れしたいってのもあるけど、善逸が悲しむのは不本意だから。」
そう言うと炭治郎からは、あーやっぱり、と呆れた音が聞こえてきた。
音だけじゃなく、表情もそれだった。
「悪い?善逸中心に考えて。」
「…前にも言いましたけど、それ善逸の為になりませんよ。」
そんな事は、言われなくても百も承知。
だけど、それとこれとは話が別なのだ。
「なら、禰豆子守るの止めたら?鬼なんだし。」
「出来ません。鬼でも、禰豆子は俺の妹なんで。」
「…そこに理由、あるわけ?ないよね?君が禰豆子を大切な妹、と思うのと同じだよ。俺にとっての、善逸は。」
そう、命に代えてでも守るって決めたから。
そんな自己犠牲を口にすると、また
話をしているうちに、要が一つの門の奥へと消えていった。
その時、腹を刺されたと言っていた炭治郎が地面に膝をついて蹲った。
「無理するから…戻る?蝶屋敷。」
「い、いえ…っ。」
「そう。」
心配する様な言葉を口にはするが、脳内には善逸の泣き顔が思い浮かんでいた。
無理矢理にでも連れ帰るか、と思案している俺の視界の端に、見知った色が映った。
視線を向ければ、憔悴した煉獄の弟が竹箒を持ったまま俯いている。
庭掃除に出たはいいが、といったところか。
「千くん。」
「え…あれが…千寿郎、くん?」
名前を呼ばれ、顔を上げる千寿郎。
…いつ見ても、煉獄兄弟は似ている。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時