56´ ページ13
「でね、禰豆子ちゃん!」
勢い良く後ろを振り向いたのに、さっきまで一緒にいた禰豆子ちゃんはいなくて禰豆子ちゃんとは似ても似つかない可愛げなんて欠片も持ち合わせてない、鬼がいた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!」
可愛くもない俺の汚い高音の悲鳴が辺りに響いた。
なんで、なんで、なんで!?
「ね、禰豆子ちゃん!?どこぉぉぉっ!?!?」
「逃げてんじゃねぇ!大人しく食われろっ!」
「不味いからっ!追ってこないでぇぇぇぇっ!」
適当に逃げて、逃げて、逃げて。
だけど、どこまでも鬼は追いかけてくる。
禰豆子ちゃん探したいのに、鬼のせいで探すなんて出来なくて。
撤いてどこかに身を隠したいのに、遮蔽物とかなんて何も無いだだっ広い空間をひたすら俺は逃げている。
「死ぬ死ぬ死ぬっ!!!たーすーけーてぇぇぇぇっ!!!」
「助けなんて来るはずがねぇぞ?ケヒヒヒ…っ!」
「来るっ!来るんですっ!俺が呼べば来るんだよっ!」
「はんっ!気弱な鬼狩りには…正義の味方がいるってか?」
そう言い捨てる俺だけど、無駄に自信があった。
「守るから。"助けて"って叫んで俺を呼んで。善逸の為なら、どこにでも駆けつけるよ。」
そう言ってくれたから。
「助けて…紫音っ!」
ギュッ、と目を瞑って名前を呼んだ。
どこからか笛の音が聞こえてきて、あっ…、と思った瞬間。
「音の呼吸、弐ノ型 前奏曲・目覚め…!」
弦を弾くような音がして、目を開けたら"滅"の字が目の前にあった。
本当に来てくれた。
「怪我、ない?」
「紫音…っ!」
助けに来てくれた事が嬉しくて、思わず振り向いた紫音に抱きつく。
体格がいいから、俺の腕が背中の途中までしかまわらない。
「良かった…」
刀をしまった紫音は、そう言って抱き締め返してきて。
抱きしめられる力加減とか、体温とか、匂いもだけど、紫音の音が俺を安心させてくれる。
けど、抱きしめながらさわさわ、さわさわってやらしい。
…俺も言えた口じゃないけど。
「ちょっ…紫音……っ、くすぐったい…って!」
「傷あるか確認してるだけだよ?…意識しちゃってる?」
そう言ってのける紫音の顔を見たら、傷の確認なんて嘘だと思えるほどに色気ダダ漏れだった。
説得力ないって言おうとした時、遠くで禰豆子ちゃんの声?悲鳴?が聞こえてきた。
「禰豆子ちゃん……!!」
俺の意識が他に向いた瞬間、紫音は消えてた。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時