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二週間前には見られなかった光景が一つある。
それは、あの炭治郎と伊之助のゲッソリした表情だ。
俺と善逸よりは軽傷だった二人は、先にアレを始めているようだった。
アレとは、"機能回復訓練"のこと。
俺は、隊士歴が三人よりも長いため以前も受けたことがある。
身長があり、体格も良いからか、俺は師範にやってもらっている。

継子だからか、男だからか、あの人は容赦ない。
体ほぐし、といいながら、体よく関節技を仕掛けてくるし。
反射訓練では、薬湯じゃなくて苦無。
全身訓練は、鬼ごっこは鬼ごっこだけど師範は平気で撒菱撒いてくる。


「炭治郎、伊之助。」

「あれ?鏡月さん、一緒じゃないんですか?機能回復訓練ですよね?」

「そうなんだけど、俺は別場所なんだよね。」

「え…紫音、一緒じゃないの?」


"機能回復訓練"が何なのかが分からない善逸が、眉尻をいつもより下げて俺を見あげてくる。


「うん、別なんだ。ごめんね(ソーリー)善逸。」


頭を撫でて、俺は三人に背を向ける。


「だから、炭治郎に伊之助。善逸のこと、頼んだよ?」

「はい、頼まれました。」

「仕方ねぇ、親分は子分の面倒をみるもんだからな!」

「え…お前らに面倒見られるの、すっごい嫌なんだけど!?」


嫌がる善逸を、炭治郎がはいはい、と背を向けた俺から離れていく。
伊之助も、その後を追いかけたらしく足音が遠ざかっていった。


───

ごめん(ソーリー)、待った?」

「いや?俺も今来たところだ…って、地味に茶番やらせるなよ。」


なんの事?、と手を広げて俺はとぼける。


「とっとと、やるぞー。ほら、派手にうつ伏せになれ。」

「痛く、しないでね?」

「なーにが痛くしないで、だ。ったく、どこの生娘だよ。」


そう言いながら師範は、俺をマットの上にうつ伏せになるよう押し投げる。
咄嗟にマットに手をついたから良かったが、間に合わなかったら顔面強打してたよ。


「そうだ…須磨が派手に泣いてたぜ。」

「いっ…須磨さんが泣くのっ、いつもだよっ…痛い痛い痛いっ!」

「いつものとは違ったんだよ、それが。おーおー、硬ぇ硬ぇ。」

「くっ……俺っ、関係なくない?あ゙ーーーーっ!」


身体がほぐれていくのは分かる。
それと一緒に、精神が削られていた。


「あのなー、お前が蜘蛛になりかけたって話したら泣いたんだぞ?派手に関係あるだろーがっ!」

「それっ、腕ひしぎ十字固めっ!!!」


俺のタップは、無視された。

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時

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