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「南南東!次ノ場所ハ、南南東!」

「分かった!分かったから、少し黙っててくれ!」

「……うるさい。」


拒否している相棒を無視する形で伝令し続ける鴉の声に、耳のいい俺は音を遮断するように耳を塞いだ。


「頼む!もう、分かったから頼むよ!」

「頼むよぉぉぉおおおおお!!!」


炭治郎が言い終わるか終わらないかのタイミングで、第三者の声が音を遮断しているにも関わらず鼓膜を揺らした。
少し進んだあぜ道で、女の子に縋りついてプロポーズしている男の子がいた。


「いつ死ぬか分からないんだ、俺はぁぁぁ!だから結婚してほしいという訳で!頼む、頼むよぉぉぉ!!」

「な…なんなんだ?いったい…」


泣きながらプロポーズをする男の子。
それを拒絶の音を沢山出している女の子。
固まっている俺たちのところに、雀が一羽飛んできた。


「アラ、ウコギジャナイ。」


そう紫衣奈が言うから、雀が泣いてプロポーズしている男の子の鎹雀だと理解した。
同業が言うんだから、間違いないでしょ。


「おっと。」


炭治郎が雀を受け止め手のひらに乗せると、チュンチュンチュンチュン、と何かを伝える様に囀る。
けど、俺にはさっぱり分からなくて紫衣奈に視線を向ける。
我関せず、とでも言いたいのか、梟はコテン、と小首を傾げる。

ウンウン、と炭治郎が雀の声に耳を傾ける傍らで、相棒である男の子は未だに女の子へプロポーズしている。


「そうか、分かった。何とかするから。」


そう言った炭治郎を、雀は救世主が現れたかのように目を輝かせた。
何とかする、とは言うもののどうするのか、と見守っていれば男の子の羽織の後ろ襟首を引っ張り、意図も簡単に女の子から引き剥がした。


「何をやってるんだ道の真ん中で!その子は嫌がっているだろ!そして!雀を困らせるな!」


自分の背後に視線を向けた男の子は、炭治郎を見ると隊服…、と呟いた。


「お前は…最終選別の時の……」

「お前みたいな奴は、知人に存在しない!知らん!」

「えー!?会っただろうがっ!会っただろうがっ!お前の問題だよ!記憶力のさぁ!」


そう言われて思い当たる記憶があったのか、炭治郎は男の子の襟首から手を離した。


「もう大丈夫だよ、君。安心して、家に帰って。」

「はい、ありがとうございます!」

「おーいー!?お前邪魔すんじゃねぇよ!その子は俺と結婚するんだ!俺の事好きなんだから」


そう言う男の子だが、女の子から往復ビンタビンタの応酬。

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時

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