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しのぶの話とは、一週間後には出来るであろう機能回復訓練のことについてだった。


「宇髄さんから、"紫音は俺が派手に見る"って言われてるんですが…どうしますか?」

「どうって?」

「宇髄さんに見てもらうか、善逸くん達と一緒に受けるか。二つに一つ、ですよ?」

「……断る理由ないよ。善逸を守るには、俺は今より強くならないといけないから。機能回復訓練、師範に見てもらうよ。」

「わかりました、私の方から鴉飛ばしておきますね。」


分かった、の意味で首を縦に振り、俺は椅子から立ち上がる。


「あ、そうそう紫音くん。」

「何?」


診察室を出ようとしていた俺は、扉前で振り返った。


「過保護も程々に。」

「……If you show me a real smile,I'll stop.(本物の笑顔見せてくれたら、やめるよ)しのぶ。」

「何言ってるか分かりませんよー?」

「教えない。」


べっ、と舌を出しニヒルに笑って俺は診察室を後にした。


───

病室に戻るにも戻れず、日光浴も兼ねて俺は蝶屋敷の屋根の上に登っていた。
療養中は何時でも吹けるように、と懐に忍ばせている笛を出しおもむろに構えた。
元の長さでは無いが、なんとか笛を吹くには事足りる長さには戻っていた。
息を吸って、笛へと息を吐き出す。
塞ぐ穴を変えれば、鳴る音も変わる。

笛の音は、俺よりも饒舌に俺の気持ちを代弁している。
続きの音がなんだったかド忘れした俺は、途中で吹くのを止めてしまった。


「え…やめちゃうの?」


聞こえるはずのない声に、俺は隣を見た。
そこには、善逸がいた。
隣で、俺を見つめてしゃがんでいた。


「もっと聞かせてくれよ、紫音。」

「…聞かせるような腕前じゃないよ。」

「……ケチ。」

「こんな拙い音聞かせたら、善逸の耳が壊れちゃうから。」

「そんなことない!…綺麗な音だったよ。」


サンキュ、と言いながら俺は笛をしまった。


「それより、何か用だった?」

「……那田蜘蛛山でさ。俺に膝枕されたい、とかって言ってたあれ……本当なわけ?」

「……嘘「ついてもダメだよ。俺が、耳良いの知ってるでしょ。」


釘を刺された。
俺を見つめる黄金の目は、いつにも増して真剣で。
見つめられる俺は、たぶん眉尻が下がってる。


「教えてくれよ、紫音。じゃないと俺…薬飲まない。」

「善逸…ずるいよ、それ。………好きだよ、初めて会った時からね。」


そう告れば告げたで、善逸は途端に顔を赤くした。
音も、乱れた。

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時

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