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「善逸!鏡月さん!」
善逸は、名前を呼ばれて悲鳴を上げた。
「大丈夫か!?鏡月さんも怪我、したんですか!?山に、入ってきてくれたんだな…!」
丸椅子に座る俺の反対側、寝台の向こう側。
声のする方を向けばそこには、隠に背負われた炭治郎がいた。
「炭治郎…」
存在に気付いた善逸は、今度は炭治郎に泣きついた。
というより、炭治郎を背負ってる隠に泣きついている。
「聞いてくれよ〜!臭い蜘蛛に刺されるし、毒で凄く痛かったんだよ〜!さっきからあの女の子にガミガミ怒られるし、最悪だよ〜!」
「ちょっと、離れろよ…俺、関係ない…」
「善逸…鏡月さんも、なんか小さくないですか?」
眉を寄せてそう聞いてくる炭治郎に、俺は視線を床へ落とした。
「蜘蛛になり掛けたからさ、俺たち今凄い手足が短いの。」
善逸が隠から顔を離すと、鼻水が伸びた。
誰しも、鼻水が着いたりするのはよしとしない。
現に、隠はドン引きしている。
「そうなのか…」
「
「確かに、毒は痛いし体こんなになってるけどね!それは、紫音も同じでしょーが!なのに、紫音は人面蜘蛛斬ってくれてさ…」
「善逸…」
丸椅子に座る俺を、善逸は寝台の上で四つん這いになってそう言ってくれる。
「………かっこよかったよ。」
「え……」
耳を疑わざるを得なかった。
禰豆子の存在を知ってからは、ずっと禰豆子禰豆子と言っている善逸から言われるとは思わなかったから。
聞こえないように言ったつもりなんだろうけど、生憎俺は耳が良い。
そのせいで、俺の音まで乱れてしまった。
「ところで、伊之助は?村田さんは見なかったか?」
「村田って人は知らんけど、伊之助なら隣にいるよ?」
善逸の言葉に習って、俺は背を向けてる寝台を振り向いた。
そこには、確かに見知った猪頭。
「あぁ!ほんとだ!思いっきりいた!気づかなかった…」
炭治郎は、隠の背中から落ちるように床へ降り善逸の寝台に捕まって、なんとか伊之助の方への顔を向ける。
「伊之助!無事で良かった!」
那田蜘蛛山で、二人の間に何があったのかは知らないが炭治郎は泣きながら無事であることを喜んでいた。
「ごめんな!助けに行けなくて…!」
「イイヨ…キニシナイデ…」
「声が…」
「……猪頭被った別人じゃ、ないの?」
あの猪突猛進でうるさい伊之助が、伊之助じゃなくなっていた。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時