検索窓
今日:49 hit、昨日:131 hit、合計:9,812 hit

40 ページ45

たどり着いた病室で、善逸は寝台の上で何やらごねている様子だった。


「三ヶ月間飲み続けるの!?この薬!?それ飲んだら、飯食えないよー!」

「善逸、代わりに俺が飲んであげる。それなら、飯食えるね?」

「紫音!ホント!?薬飲んでくれるの!?ありがとう〜っ!」


泣き着いてきた善逸を、短い手でよしよしと撫でる。


「すげぇ苦いんだよ薬…それが辛いんだよ…しかも、五回も飲まないといけないって…」

「らしいね、俺もそう言われたよ。けど、五回が十回に増えるだけだから、代わりに飲んであげるよ。」

「というかさ?薬飲むだけで、俺たちの腕と足治るわけ!?ほんと?ねぇ、ほんとに治るわけ!?どうやって治るわけ!?ちゃんと説明ほしいわけ!」

「静かにしてくださいぃ…!」


騒ぎ出した善逸に、きよが注意するが俺の腕の中で喚くのを止めない。
俺は、よしよし、とするだけ。


「静かになさってください!説明は何度もしましたでしょう!?いい加減にしないと、縛りますからね!」

「アオイ、それは駄目。させない。善逸が薬嫌がってるんだよ。俺が飲めば解決、するよね?」


寝台越しに注意してきた神崎アオイを見上げ、俺がそう聞くと、アオイは眉間に皺を寄せた。


「駄目に決まってるじゃないですか!決まった量を決められた方法で内服するのが薬です!過剰に飲めば治りが早まる、ということはないんです!鏡月さん、死にたいんですか!?」

「善逸の為なら、いいよ。死んでも。」

「ダメでしょーが!ダメでしょーが!!死んだら俺の事守れないんよ!?わかってんの!?紫音!」


薬を飲むのが嫌だ、と泣いていたはずの善逸は、死んでもいい、と言う俺をギューッ、と抱きしめて泣いていた。


「全く…善逸さんも善逸さんなら、鏡月さんも鏡月さんです。 」


アオイはそう呟きながら、病室を出ていこうとしていた。


「あ……アオイ、頼みある。」

「なんでしょうか。…先に言っておきますが、鏡月さんが善逸さんの分の薬を飲む許可は出しませんよ。」

「違うって…しのぶに言って、病室変えて。」

「それは…大丈夫だと思いますけど……」

「頼んだよ。」


それだけ、と言って俺は善逸を寝台へ登るよう促す。
俺が病室変更を申し出た理由?
決まってるでしよ。
善逸の為。
…と言いつつ、単なる自己満。

41→←39



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (5 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
21人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。