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たどり着いた病室で、善逸は寝台の上で何やらごねている様子だった。
「三ヶ月間飲み続けるの!?この薬!?それ飲んだら、飯食えないよー!」
「善逸、代わりに俺が飲んであげる。それなら、飯食えるね?」
「紫音!ホント!?薬飲んでくれるの!?ありがとう〜っ!」
泣き着いてきた善逸を、短い手でよしよしと撫でる。
「すげぇ苦いんだよ薬…それが辛いんだよ…しかも、五回も飲まないといけないって…」
「らしいね、俺もそう言われたよ。けど、五回が十回に増えるだけだから、代わりに飲んであげるよ。」
「というかさ?薬飲むだけで、俺たちの腕と足治るわけ!?ほんと?ねぇ、ほんとに治るわけ!?どうやって治るわけ!?ちゃんと説明ほしいわけ!」
「静かにしてくださいぃ…!」
騒ぎ出した善逸に、きよが注意するが俺の腕の中で喚くのを止めない。
俺は、よしよし、とするだけ。
「静かになさってください!説明は何度もしましたでしょう!?いい加減にしないと、縛りますからね!」
「アオイ、それは駄目。させない。善逸が薬嫌がってるんだよ。俺が飲めば解決、するよね?」
寝台越しに注意してきた神崎アオイを見上げ、俺がそう聞くと、アオイは眉間に皺を寄せた。
「駄目に決まってるじゃないですか!決まった量を決められた方法で内服するのが薬です!過剰に飲めば治りが早まる、ということはないんです!鏡月さん、死にたいんですか!?」
「善逸の為なら、いいよ。死んでも。」
「ダメでしょーが!ダメでしょーが!!死んだら俺の事守れないんよ!?わかってんの!?紫音!」
薬を飲むのが嫌だ、と泣いていたはずの善逸は、死んでもいい、と言う俺をギューッ、と抱きしめて泣いていた。
「全く…善逸さんも善逸さんなら、鏡月さんも鏡月さんです。 」
アオイはそう呟きながら、病室を出ていこうとしていた。
「あ……アオイ、頼みある。」
「なんでしょうか。…先に言っておきますが、鏡月さんが善逸さんの分の薬を飲む許可は出しませんよ。」
「違うって…しのぶに言って、病室変えて。」
「それは…大丈夫だと思いますけど……」
「頼んだよ。」
それだけ、と言って俺は善逸を寝台へ登るよう促す。
俺が病室変更を申し出た理由?
決まってるでしよ。
善逸の為。
…と言いつつ、単なる自己満。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時