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爆風と共に人であった者たちは、吹き飛んだ。
同様に、爆発とその熱で俺の体にも傷や火傷が出来る。
その爆風で、人面蜘蛛が地面へと落下したのが見えた。


「音の呼吸、弐ノ型 前奏曲・目覚め…陸弦!」


人面蜘蛛はとっさに、身の保身の為に糸で上へと逃れ毒を吐いてきた。
それが被弾する前に跳んだ。
吊るされた家の中へ逃げ込んだ人面蜘蛛を追いかけて、周りの木々を足場や人面蜘蛛の糸を家の入口へ突っ込んでいく。
そのまま頸を斬り落とし、俺は屋根を突き抜けた。
俺の視界には、大きな満月。
俺はそのまま落下して、屋根の上。


ごめん(ソーリー)…善逸…」


これ以上毒が回らないよう、必要最低限の呼吸を心がける。
脳裏にあるのは、毒で抜けた髪に怯える善逸(たんぽぽ)で。
不甲斐なくて、穴があったら埋めてほしい程だ。


───

呼吸もしづらくなり、体の感覚もなくなって俺の脳裏では師範が何か言っている。


「何?お前、そんなダセェ死に方すんのかよ。それでも宇髄天元様の継子か?あーぁ、ド派手に期待してたのによー。可愛くねぇけど…俺の継子なら、簡単に諦めてんじゃねぇ!死んでも生に喰らいつけ!」


簡単に言ってくれるよね、師範。


「もしも〜し。紫音くん、大丈夫ですか?」


月を背にしたしのぶが、そう問いかけてきた。
治療者の立場なら、俺の状況を見て大丈夫では無いことくらい、分かりそうだけど。


「師範…」

「貴方の師範は、筋肉ダルマですよ?」

「今、師範が出てきて…諦めんじゃ、ねぇって…」

「あぁ、それは走馬灯ですね。一説によると、死の直前に人が走馬灯を見る理由は…今までの経験や記憶の中から、迫り来る死を回避する方法を探しているんだそうですよ。」


注射を持ち、空気を抜きながら経験したことないから分からない、としのぶが言う。
そして、俺の額に左手の人差し指を当てた。


「うん。さすが、宇髄さんの継子ですね。上手く呼吸で毒の回りを抑えられてますね。それが出来ていなければ、貴方の大嫌い蜘蛛になっているところでしたよ。」


そう言ってから、しのぶは縮んだ俺の右腕をとって解毒薬を打った。


「しのぶ…」

「はい、なんですか?」

「下にいる…善逸(たんぽぽ)…」

「下にいる、たんぽぽ…がなんですか?」


聞き返すしのぶの声が遠くなり、俺の意識は闇へと沈んだ。


「全く貴方は冨岡さん(どっかの誰かさん)ですか?って、聞こえてませんね。」

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時

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