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十分後に、手足の痺れ。
更に十分後に、目眩と吐き気。
その五分後には、激痛に襲われ体が縮み始め失神するという。


「そして、目覚めた時には…クフフヘヘヘヘッ!」

「善逸を脅すな…!」


俺は刀の柄に手を伸ばし、ギリッ、と握りしめる。
その時、カチッ、と時計の針が一つ進んだ。


「ぎゃあああ!ぎゃあああ!!」


悲鳴をあげる善逸の足元に、群がり出す人間だったであろう成れの果て。
そこから逃げるように走り出す善逸。


「逃げても「無駄ね!はいはいはい!分かってんだよ!わかってんのぉーっ!」


そしてそのまま木を登った。
猿か、と言いたくなるような速さで木を登った善逸。


「何してんだ、お前!」

「うるせぇよ!うるせぇ〜!」


比較的太い枝の上で、善逸は蹲りそう言う。


「善逸!!」

「怯えることはないぞ?毒が回りきって蜘蛛になったら、知能も無くなる!」

「いやっ!だから、それが嫌なんだわそれがっ!なんで分かんないの!?お前さー!友だち、恋人いないだろ!嫌われるよーっ!?」

「チッ!毒を追加させられて、早く蜘蛛になりたいようだな!」

「蜘蛛の分際で善逸を脅すな…」


木の上で、ヒィィィィッ、と善逸が怯えてる。
理由はそれだけで十分だった。


「待ってて、善逸。人面蜘蛛(こいつ)は…俺が斬る。」


もはや、蜘蛛だからという恐怖は俺の中からなくなっていた。
鬼なら話は早い。
悪鬼滅殺のみ。


「俺だって精一杯頑張ってるよ!なのに、最期は髪ずるむけで化け物になるの!?」

「ならないよ…させないっ!」


善逸のいる木を、人であった者たちがカサカサと登っていく。
一人にして、と懇願する善逸が髪を掴んだ時、なんの抵抗も無くそれは手の中に収まった。
それを見た途端に、善逸は気を失ったらしくそのまま下へと落ちる。


「善逸!」

「なんだこいつは…俺たち一族を殺しに来た、鬼狩りではないのか?」


咄嗟に走り、善逸が地面に接触する前に抱き留めた。
君をこれ以上傷も怪我もさせない。


善逸(こいつ)はこの山に入った仲間を探しに来ただけだ……お前の頸は、この俺が斬る。……派手に、ね。」


師範の口癖まで、いつしか俺は継いでいたらしい。
善逸、こんなところに一人にするのを許してくれ。


「ド派手に行くよ。」

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時

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