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「つっ…!」
不意に何かが指に刺さった感覚に、思わず口から声が漏れた。
「紫音?
「善逸!大丈夫か?」
「なんかチクッとしたぁ!紫音は?痛そうな音、聞こえたけど…」
「俺も、チクッとした。」
俺は何かが刺さったであろう手を見つめてみたが、別段出血してるわけでもないいつもの手のひらに眉を顰めた。
善逸もそうらしく、腹立たしそうな音が耳に届いた。
「炭治郎たちも見つかんないし、最悪だよ!」
「そう言うなよ。なんか、俺といるのも最悪って言われてるように聞こえるよ?」
「そう聞こえたんなら、そうなんじゃない!ったく、どこだよ!」
炭治郎たちが見付からないから、善逸はただ苛々しているだけ。
分かっていても、本人にそう言われるのはやはり辛い。
「どっちよ!?」
「というか、臭くない?」
「臭いっ!もう、泣きたいっ!」
そんな会話をしている俺たちの足元で、蜘蛛がカサカサカサカサ、と縦横無尽に動いていた。
「気持ち悪…」
「それね!いや、蜘蛛も一生懸命生きてるんだけどさー!」
「滅んでいいよ、蜘蛛なんて……気持ち悪すぎだよ。」
「紫音がそこまで嫌悪するって珍しくないっ!?って、もううるさいよっ!!じっとしてて!!」
善逸が振り返った先を、俺も視線を向けるとそこにいたのは人面蜘蛛。
「はぁ………?」
「こんなことあるぅぅぅぅぅぅっ!?」
「きもいきもいきもいきもいきもい…っ!」
───
響き渡るは汚い高音。
そして、呪詛のような
隠しても仕方ないことだが、俺は蜘蛛は滅べばいいのにと思っている。
師範的な言い方をするなら、"ド派手に嫌い"。
俺も善逸も、人面蜘蛛から逃げていた。
「人面なんですけどぉ!?」
「人面蜘蛛って何!」
「どういうことこれ!!ねぇっ、紫音!!どういうことぉっ!?」
「俺が聞きたいくらいだよっ!」
夢であれと、二人で切に願うがそれも虚しく背後からの音が現実を叩きつけてくる。
「起きた時、禰豆子ちゃんの膝枕だったりしたら!もうすっごい頑張るぅっ!畑を耕しますぅっ!一反でも二反でも耕してみせるぅっ!」
「俺は善逸を希望するっ!というより!むしろ、善逸であれっ!それなら、死んでも善逸の事守れるからっ!」
二人でズザァァァァッ、と走っていた勢いを殺し、天を仰ぐ。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時