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「正しい振る舞いって、具体的にどうするんだ?なんでばばあが、俺たちの無事を祈るんだよ。なんも関係ないばばあだろ。なんでなんだよ!ばばあ、立場を理解してねぇだろ!」
答えようにも答えられないのか、炭治郎は前を向いて走る速度を上げた。
それを伊之助は、勝負だと勘違いして負けねぇぞ!、と加速する。
「待ってよぉぉぉっ!」
「善逸、お姫様抱っこして俺が走ろうか?」
「いいよっ!」
「あ……」
俺の申し出を一蹴して、善逸は二人の後を追いかけるように加速していった。
君の胸の音は、走ってるせい?
いつもより、速いよ?
───
「待ってくれ!ちょっと待ってくれないか!」
夕暮れ。
後数刻で、鬼の時間がやってくる。
後少しで、言い渡された任務地の山に着く。
そんな時に、善逸は待って、と俺たちに頼んできた。
その場に、膝を抱えて座ったまま。
「善逸、どうしたの?」
「怖いんだぃ!目的地が近づいてきて、とても怖い!」
「そうか、怖いんだね。大丈夫、俺がいるよ?」
地面に両膝をつけて、俺は善逸を後ろから抱き込む。
恐怖で涙目になった逆さまの善逸が、俺の目に映った。
「何座ってんだこいつ、気ん持ち悪ぃ奴だな。」
「君が言えた口じゃないよ、伊之助。」
「そうだぞ!猪頭っ!」
嫌悪を口にした伊之助に、俺は曲線を描く様に釘を刺した。
もちろん、オマケの睨みも忘れてない。
善逸は、俺の言葉を肯定する。
「目の前のあの山から、何も感じねぇのかよっ!」
そう言って善逸が指を差すのは、言い渡された任務地である"那田蜘蛛山"だ。
「しかし、こんな所で座り込んでも…」
「やっぱ気持ち悪ぃ奴。」
「伊之助?」
「気持ち悪くなんてないっ!普通だ!俺は普通で、お前らが異常だ!」
善逸は、二人を指差して言い放った。
あながち間違ってはいない。
鬼を怖がるのは、至って普通の感情である。
……身内や、大事な人が鬼にされたり喰われたりしなければ憎んだりなんかは出来ない、と思う。
伊之助の様に、中には
炭治郎と伊之助も、何かしら感じたらしく同じ方向に視線を向けている。
「え、何?どうしたの?」
「なんだこの匂い…」
呟いて駆け出す炭治郎。
続く伊之助。
「炭治郎!」
立ち上がって突っ走り気味の炭治郎を諌めようとする俺を、善逸が待って!、と右手に縋ってきた。
「置いてかないで!」
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時