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ウィステリアの家紋の家での療養も、今日でひと月が経った。
炭治郎と伊之助はドクターに完治しているとお墨付きもらっていた。
縁側で刀の手入れをしていると、どこからともなく鴉と梟が飛来した。


「紫衣奈。」

「任務ヨ。ホ「北北東!北北東!次ノ場所ハ、北北東!」


紫衣奈の声を遮るように、炭治郎の鴉が任務を告げた。
グルッ、と首を部屋の中へ一度向け、また俺を見つめてくる。


「貴方モ北北東ヨ。サ「三人ハ那田蜘蛛山ニ行ケ!」

「…俺も?」

「……エェ、ソウヨ。隊士ガ何人モイナクナッタッテ、聞カサレタワ。紫音、油断大敵ヨ。」

「ん、サンキュ。」


頭を撫で、首を指先で擽ってから空へと放した。


「紫音。紫音も、任務?」


障子からひょっこり、と善逸が顔を出してそう聞いてきた。
刀の手入れを終わらせ片付けながら、そうだよ、と返す。


「そうなんだ。あ、のさ…紫音。」

「何?」


片手に手入れの道具を入れた巾着を持ち、もう片方には鎖で繋がった二対の刀を持って、中へと入る為に善逸の前に立った。
俺が立ち上がったから、善逸が上目遣いになる。


「鼓の屋敷で、俺の事守ってくれて…ありがとう。」

「"俺が結婚出来るまで、守れよな"…だったよね。それまで、俺が守るから。」

「いや、それ…はそう、なんだけどぉぉ…」


準備しようね、と横を通って中へ入る。
自ずと俺たちの事を見ていた炭治郎たちと、目が合った。


「何?見世物じゃないよ。」


早く準備しなよ、と善逸と話している時より声のトーンを落として言えば、伊之助がなんだあいつ、と苛ついた音をさせていた。


───

"滅"の字を背中に背負い、紫水晶の額当てをつけ、刀を背負う。
その姿で、ウィステリアの家紋が描かれている門前に立った。


「では、行きます。お世話になりました。」

「どのような時でも、誇り高く生きてくださいませ。ご武運を。」


少し長めに頭を下げる。
頭を上げれば、家主に背を向けて次の任務に着く為走り出す。


「"誇り高く"、"ご武運を"。どういう意味だ!」

「そうだな…改めて聞かれると、難しいな。誇り高く…自分の立場をきちんと理解して、その立場であることが恥ずかしくないように振る舞うこと…かな?」

「あ?」

「それから、おばあさんは俺たちの無事を祈ってくれてるんだよ。」


そう炭治郎が説明するも、伊之助は立場とは、恥ずかしくないとは、と重ねて質問している。
さすがに炭治郎も、言葉を詰まらせた。

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時

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