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ウィステリアの家紋の家で療養を余儀なくされてから、一週間。
俺の足の捻挫は、それなりに回復していた。
左目の腫れも引き、視界も元の広さに戻った。
師範からの返信(リメール)も二日前に届いていた。

そこには

"半年に一度の柱合会議が近々あるから、そこでお館様から何かあるだろう。"

と書かれていた。
その時に紫衣奈から、任務も聞かされていた。


「あれ?紫音、なんで隊服?」

「任務。」

「え!?もう!?いやいやいや、だって足捻挫って!完治してないんじゃない!?」

「完治はしてないよ。後七日は休まないとならないらしいから。」


だったら!、と俺を心配してくれる善逸の頭を、ぽすぽす、と撫でる。


「サンキュ、善逸。大丈夫だよ、現場近場だし。」

「無理…するなよな。」


身長差で上目遣いになる善逸に、俺の心臓(ハート)が高鳴る。
紫水晶の額当てをつけて、刀を背中へ背負う。


「行ってくるよ。」


俺は(・・)いつも雛鶴たちにするように、善逸を抱きしめる。
変な気持ちが起きないように、体を離して善逸を残して部屋を出た。
廊下を歩いてると炭治郎と伊之助とも会い、善逸同様に隊服である理由を聞かれた。
任務だ、と言えば優しい炭治郎はお気をつけて、と言ってくれる。
伊之助は弱味噌だから死ぬだろ、とか言われた。
心外でしかない。

そんな二人に別れのハグをして、ウィステリアの家紋の家を後にした。


───

爆発音と共に、鬼の頸が飛んだ。
みんなと遊びたかっただけなのに、と鬼は最期にそう言って塵になった。
それに背を向けて、森を抜け出る。


「捕まってた子供たちは?」

「隠ガ保護。親元ヘ帰ッテルワ。」

「そう。」


それを聞いて、心がホッとする。


「紫音、ホント子供ニ嫌ワレルワヨネ。」

「うるさいよ、紫衣奈。」


傍らを飛ぶ梟を、ムッと睨んだ。
いつだったか、師範にも言われた。


「お前、誰かに雰囲気似てると思ったら冨岡だ。その表情出さねぇところが、地味に似てる。地味にな。」


心外も心外。
その、冨岡という人に会ったことはないけど。

山間に隠れていた太陽が、ひょっこり、と顔を出した。
陽光の眩しさに、足を止めて目を細める。
その時、視界の下端の方で黄色い何かを見つけた。


「あ、たんぽぽ(善逸)。」

「違ウワヨ、アレハ蒲公英。……紫音、意外ト重症カシラ?」

「………かもね。」


俺の足はウィステリアの家紋の家に向いた。

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時

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