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被害に合い、助けられなかった人たちを弔っている時に伊之助は叫び目を覚ますと飛び起きた。
｢ぎゃあああ！起きたーーっ！｣
｢勝負ぅっ！勝負ぅっ！｣
｢寝起きでこれだよ！一番苦手これぇっ！｣
そう言いながら善逸は迷うことなく、俺の背中へと隠れる。
けど、伊之助はそれ以上追ってこず足を止めていた。
｢何してんだお前らぁっ！｣
｢何って、埋葬。｣
｢あぁ？｣
｢伊之助も手伝ってくれ、まだ屋敷の中に殺された人がいるんだ。｣
山で育ったという伊之助は、弔いをやらないし手伝わない、と言った。
｢そんなことより、俺と戦え！｣
｢うわ、本当におかしいんだコイツ……｣
｢クレイジーだね。｣
炭治郎の背中を見ながら、小声で俺と善逸はそう言葉を交わした。
｢そうか…傷が痛むから出来ないんだな。｣
｢は？｣
言われた伊之助から、苛ついた音が聞こえてくる。
｢いや、良いんだ。痛みを我慢出来る度合いは、人それぞれだ。｣
ツラツラ、と喋る炭治郎だが、伊之助がそういう理由で出来ない、と言った訳では無いことに未だ気付かない。
子供たちですら、分かっていると言うのに。
伊之助の青筋が、更に増えた。
苛ついた音も、大きくなる。
｢はぁぁ！？舐めるんじゃねぇぞ！百人でも二百人でも、埋めてやるよ！俺が誰よりも埋めてやるわっ！｣
｢…善逸、あれはわざとか？それとも、素？｣
｢素、だと思うよ……こいつら、駄目だ。｣
俺も善逸も、ズレた二人を乾いた音で笑った。
───
伊之助の手伝い…というより、まんまと炭治郎に乗せられたと言える伊之助の働きもあり、空がオレンジに染まる頃には全ての被害者を弔う事が出来た。
出来たばかりの墓に手を合わせる俺たちの後ろで、伊之助は謎に木に向かって頭突きをしている。
…変な奴。
祈りを終えた頃、炭治郎の鴉と俺の梟が飛んできた。
｢山ヲ下リロ！山ヲ下リロ！｣
｢着イテ来ナサイ、コノ私ニ！｣
｢コノ私ニダ！｣
｢私ニヨ！｣
子供たちは喋る鴉と梟に驚くが、思考することを放棄するよう長男に言われていた。
下山しようと皆で歩き出すと、伊之助がどこに行くのか、と呼び止めた。
｢山を下りるんだよ。｣
｢まだ勝負は終わってねぇぞ！｣
｢疲れてるでしょ、君も下りるよ。｣
｢はぁ！？俺は疲れてねぇ！｣
｢そうか、君…一人だけ寝てたしね。｣
行こう、と皆を促し歩きだす。
｢待てコラァっ！｣
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年6月1日 18時
