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「戦わねぇなら、さっさと退きやがれっ!オラッ!」
「うっ…」
「紫音っ!」
「退けぇっ!」
「どぅはっ…」
口の中も切れたみたいだ、鉄の味がする。
左目も、腫れて視界が狭い。
「もういい…これ以上俺の邪魔をするなら…そいつごと箱を串刺しにしてやるっ!」
「うっ…させないっ。」
刀を振り上げられ、陽の光がギラリ、と反射した。
「やめろっ!」
「あん?」
「やめろーーっ!」
炭治郎が猪頭の腹に、一発ぶち込んだ。
その瞬間、鈍い音が鼓膜を打つ。
「骨、折ったーっ!!」
「…
「お前は鬼殺隊員じゃないのかっ!何故鏡月さんが刀を抜かないか分からないのかっ!隊員同士で悪戯に刀を抜くのは、御法度だからだ!それをお前は一方的に痛めつけていて、楽しいのか…っ!卑劣…極まりないっ!」
「ハハハ…そういうことかい、悪かったな。じゃあ、素手でやり合おう…!」
その後、結局素手でやりあった二人。
それが終わりを迎えたのは、猪頭の脳震盪による失神だった。
そして、分かったことが三つ。
猪頭は単なる被り物で、その下の素顔は美少年ということ。
炭治郎の頭突きは、とてつもなくヘビーだということ。
そして、猪頭は嘴平伊之助、という名前だということ。
炭治郎が助けた子供の一人、照子と話している間に地面に座ったままの俺の下に善逸が寄ってきた。
「だ、大丈夫?紫音、足も怪我してるって言うのに…」
「ん、腫れたり切れたりしてるけど炭治郎の頭突きよりは平気かな。」
「そ…それは、確かにね…」
地面で伸びてる伊之助に、視線を向ける。
引き締まった体に、美少年フェイス…なんともアンバランスだ。
「鏡月さん!すみません、俺のせいで…」
「気にしなくていい、結果的に箱を守っただけだから。」
あくまで俺は、箱を守る善逸を守っただけ。
「善逸は…どこも、怪我とかしてない?」
「うん、指先すら怪我してないよ。」
それが聞けて、安心した。
なのに、善逸からは痛いって音がする。
怪我してないんだよね?…なんで?
「善逸、羽織貸してくれないか?伊之助、あのままじゃ可哀想だから。」
「
「え?」
「いや…なんでもない。」
頭にクエスチョンマークを浮かべる炭治郎に、微笑んで誤魔化した。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時