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「善逸、立てる?」
傍に行き片膝ついて、俺は手を差し出した。
俺よりも少し小さめの手が乗せられ、優しく掴んで軽く引けば釣られる様に善逸が立ち上がった。
「外に出れるとこ、探そうか。ねぇ、君も着いてきて。じゃないと、守れないから。」
「は…はい…っ。」
両手が塞がるのは万が一の時に動けないから、善逸に正一と手を繋いでもらった。
俺は善逸と正一を連れて、歩き出す。
正一以上に怯えている善逸の手は、しっとりを通り越してウェットだ。
歩いてはいるものの、とことん牛歩だから景色が変わらない。
と、いうことは部屋も未だ同じということ。
「すみません、善逸さん…」
正一に声を掛けられてぎゃあああああ、と悲鳴を上げた。
俺にしがみついて、正一を見てる善逸の顔は顔面蒼白。
血という血が頭にいってないんじゃないか、というくらいブルーだ。
「あ、あ、あ、合図…合図をしてくれよ…っ話しかけるなら急にこないでくれよ…っ、心臓が口からまろび出るところだった…っ。」
「
怯える善逸の背を、宥めるように何度も撫でる。
「すみません…」
「もしそうなっていたら、正しくお前は人殺しだったぞ…っ!分かるかぁ!?」
「ただ、ちょっと…」
「どうか、した?」
そう聞くも、俺の耳には届いている。
善逸の音の方が大きく聞こえているが、その中に小さいが他者の不安の音が混ざっている。
「汗、息、震えが酷すぎて…」
「なんだよぉ!俺は精一杯、頑張ってるだろぉ!?」
「いや、申し訳ないんですけど俺も不安になってくるので…」
「やだぁ、ごめんねぇ!?」
確かに鬼は怖い。
だとしても、善逸の怯え方は異常かなとは思う。
…俺みたいに、鬼に家族が喰われたとかそういう被害に遭ってない。
そんな考えが、ふっ、と脳裏に過ぎった。
「でもな!でもな!あんまり喋ったりしてると、お…鬼とかにっ、ほら…見つかるかもだろぉ!?だからぁっ、極力静かにした方がいいって思うの俺はっ!」
目からボロボロ涙を零しながら、善逸は正一にそう訴えている。
それを邪魔するように背後で鬼の音がした。
「ん?」
先に鬼を見たのは、正一で不安と怯えの音が強くなった。
ギギギギ、と善逸も振り向く。
俺は半身振り返って、右手を背中の刀へ伸ばした。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時