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善逸が俺を見てくるから、見つめてみれば慌てて前向いたから思わず笑ってしまった。
「あ……紫音は食わないのか?」
「俺は平気だよ、善逸が食べ」
ていいよ、と続くはずの声は自分の腹の虫の鳴き声でかき消された。
ジーザス、なんてタイミングだよ。
「ぷくくっ……腹は正直だね。」
目には涙がまだ残ってるのに、善逸は格好がつかない俺を笑った。
その顔が、また俺の音を乱す。
「はい、紫音。」
「ん?いいの?」
聞けばコクリ、とたんぽぽみたいな頭が縦に動いた。
優しい善逸に、フッ、と笑えば目が泳いだ。
一瞬、善逸の音が乱れたと思う。
「ありがと、善逸。」
半分になって戻ってきたおにぎりを受け取る時、善逸の口元が見えた。
「善逸、付いてる。」
「え!?ど、どこどこ!?」
見当違いのところに指で触るから、ここ、と言いながら俺が取ってそのまま食べてしまう。
「あ……」
「ん?」
真っ赤な善逸に、苦笑いしてる炭治郎。
そんな二人を見ながら、俺はおにぎりを口へと運んだ。
───
「鬼が怖いっていう善逸の気持ち、分かるよ。」
「紫音〜!」
「鏡月さん、善逸に甘いですよ。善逸だからといって、雀を困らせたら駄目だ。」
歩きながら善逸に共感すると、炭治郎から苦情が入った。
心外だな、と炭治郎の後頭部に視線を刺す。
「え?困ってた?雀?なんで分かるんだ?」
「いや、善逸がずっとそんな風で仕事に行きたがらないし、女の子にすぐちょっかい出す上に、鼾もうるさくて困るって……言ってるぞ?」
善逸の雀は炭治郎の手のひらの上で、そうだ、とでも言うようにチュン!、とひと鳴きした。
「鼾は関係ないでしょ。」
「だよね?って、言ってんの!?鳥の言葉分かるのかよ!?」
「うん。」
「嘘だろ!?俺を騙そうとしてるだろ!」
「安心して、善逸。俺は分からないから。」
俺がそう言うと、だよねだよね!!、と手を取ってブンブン、と激しく握手をされた。
その時、上空で炭治郎の鴉が鳴いた。
傍らには、俺の梟も飛んでいる。
「駆ケ足!駆ケ足!炭治郎、善逸、紫音、走レェェ!」
「貴方タチ、共ニ行キナサイ次ノ場所マデ。」
「走レ!走レ!炭治郎、善逸、紫音!」
「チョット、ウルサクテヨ!」
その光景を見た善逸が、鴉と梟が喋ってる事にひっくり返った。
「善逸、行くよ?お姫様抱っこ、しようか?」
「要らないからっ!」
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時