【歌い手】お願いだから嫌いにさせて

32 ページ32

SIDE:A

「……A、平気?」

「何が?」

「なんか、辛そうな顔しとるよ」

「してないよ、元々こんな顔。」

「……無理、してへん？」

「してないよ、大丈夫」

「……そか」

センラ、何言ってるんだろう。
辛いことなんか、ひとつも無いのに。

だって絢香さんと坂田は恋人同士で、そういうこと、するかもしれないし。
別段不思議なことではない。


＊Side change… ▶ センラ


……A、揺れとる。

坂田、絢香さんと別れたんやで、って言えたら、きっと皆、もっと好きなように暮らせてたのに。

でも、きっとそんなこと言ったら、Aは坂田の方に行っちゃうんやろな。

だから、言えない。

……せめて、あと4日だけ。
恋人でいられる期間だけでいいから。

休みの日も、会ってくれるかな、A。

せめて、あと4日は、俺の事だけを想ってて欲しい、なんて我儘(わがまま)だろうか。


「……なぁ、A、土日暇?」

「?暇だけど」

「俺と、旅行行かへん?1泊2日で」

「……やらしー」

「ちゃうわ!京都でも行かへん?っていう」

「いいけど、なんで京都?」

「俺、元々京都住んでてな、どうせなら行こかなあと思って」

「予定ないけど……うーん、」

「交通費センラ負担、宿泊費タダやで!どう?」

「……行きたい、お母さんに相談してみる」

「よっし、友達当たってみるわ」

「だから宿泊費無料なんだ」

「そやで、やっぱコネって大事やね」

「こういうときコネじゃなくてコネクションって言った方が良くない？」

「そういうもんなんか」

「いや知らないけど」

33→←31

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す