どちらさまですか……【歌い手】

83 ながい ページ33

変じゃないよね、と思いながら、ショーウィンドウに映る自分の姿を確認する。

サラッとしたブラウスにロングスカート。
くるりと回れば、ふわりとスカートの裾が舞う。

うん、変ではない……かな、うん。


すると、後ろから


「A、何してるん？」

「……うわ」

「うわってなんやねん」


笑っているのを隠すように右手で口元を隠しているセンラさん。
バカだなと思ってそうだな、この人。
と、思った。


「ほら、くるって回ってて可愛いなぁ思て」

「……はぁ」


なんだか誤魔化されたような気もするが、まあいいか。


「……あれ、そういえば後輩さんは？」


いるのはセンラさんだけだ。
後輩さんに会いたかったのだが……。

そう思ってキョロキョロしていると、腕を掴まれた。手を繋ぐ代わり、だろうか。


「ほな、行こか」

「……えっ、どこに？」

「え？あの後輩んとこやろ、会いたい〜言うたのAやんか。ほら行こ」

「えっ、あ、はいっ」


腕を引かれ、ぐんぐん前へ進んでいく。
半分、引っ張られるようにして。

足が早い。ていうか、歩幅が大きいのか。


「ちょ、あの、せ……。おりはら、さん」

「ん？……あ、足早かった？すまんな」

「い、いえ」


少しスピードを緩めてくれて、いくらか楽になった。
そもそもの私の歩くスピードが遅いので、少し早く感じるけれども。


「……お、折原さんって、歩幅大きいんですね」

「え？そう？アイツらと居るときと、スピード別に変わらんけど……。」


”そんなに早いか？”と呟いて、あ、と思いついたように



「……あ、俺らの足長いんか！あー！ごめんなぁ！」


と自慢げに言われた。うわ。


「……うわ」

「ふはは」

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