どちらさまですか……【歌い手】

78 すげー ページ28

舞台に立ったなるせくんは、まるで緊張なんてしてないように振舞っている

ぷ……プロだ……。



客席の方を見ると、赤に交じってピンクも沢山。

なるせくん、すごいなぁ……。
ラップ、かっこいいし。


……緊張する。





『アンコールありがとうございまーす！
ね、なるせくん！』

『そうね、天ちゃん』


和やかな雰囲気で、MCタイムが始まった。
自己紹介代わりの即興ラップもしているようだ。
即興のクオリティじゃないぞ、これ。
すごい。


「……さてさて、では！なるせの〜！おうたタイム〜！少しの間、お付き合い下さい！」


HappyHalloweenの、軽快なイントロが流れ始める。


最初から、ガンガンに飛ばしていくなるせくん。なんか強そう。



もうすぐ、出番か。
そう思い、近くのテーブルからマスカレードマスクを手に取り、付ける。

……あ、やばい、緊張する、すごく。






『―――合言葉望みドアノック』


これが、私の登場の合図。





ひとつのスポットライトが、私の方へ向いた。
眩しくて、目を細める。


……わ、ペンライトが、綺麗。
会場の3分の1か、それ以上が、私の色に染まっていく。


最前列で、少し困ったような表情の女の子が、隣の女の子に話しかける。

何かを受け答えすると、驚いたような顔をして、私の色にペンライトを変えた。


……確かに、自撮りとかあんまり上げてないからな。分からなかったか。
それか、そもそも私のことを知らないか、どっちか。





なるせくんが、こちらをちらりと見ると、にこりと笑った。


……もしかして今。



……ちゃんと登場できたか確認したってことなのか？

……私だって、

私だって、1人で登場くらいできるから！！！

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