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「こっち向いてよ。」
「恥ずかしい、むり。」
「えー。」
渋々寝返りをうつと、
そうちゃんの顔が目の前に広がる。
やっぱシングルベッドに二人って無理がある。
「おれいっつも背中見てて、寂しかった。
Aちゃんの顔見えて落ち着くー。」
「私は緊張する。」
「可愛い。」
自分の背中にそうちゃんのかたい背中が
あたるのも、私は好きだったけどね。
次の日、そうちゃんとお土産や荷物を
片付けながら話す。
他愛ない話ひとつも、昨日までとは幸福感が違う。
そうちゃんは私の彼氏なんだ。
私のこと、好き、なんだって。
好きな人が自分を好きになるってどんな確率？
「お土産たくさん買ったね。」
「ねー、でもこの辺とかほとんど
バイト先のやつだ。」
「バイト先仲良い？」
「結構仲良いよ〜。大学の同期も居るし。」
「こーき？」
少し機嫌が悪そうな口調で聞いてくる。
「あー、うん。」
「ふーん。Aちゃん、バイトやめてもいいよ？
おれが養ってあげる。」
「もーそうちゃん高校生でしょ！」
「…じょーだんじょーだん！」
「むしろ私が養ってあげちゃう！って
感じだから。」
「えー、おれヒモみたいじゃん！」
「あは、似合う似合う。」
「おいっ！」
旅行から帰ってきたら、
仙台に帰った方が良いって改めて言うはずだった。
けど、せっかく両思いになれたそうちゃんに近くに
いて欲しいって思ってしまうのは悪いこと？
そうちゃんが私のそばにいることを選択して
くれたのが、嬉しくて仕方ないんだもん。
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作者名：うた | 作成日時：2021年4月8日 23時
