天使になって待ってるね I (ページ11)

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「おかえり。」

鍵を開ける音が聞こえるのかな？
私が家に帰ってくると、そうちゃんが毎回玄関まで
来てくれるのがだんだん当たり前になってきたころ。

「ただいま～。」

前を歩くそうちゃんの首筋には本当にうっすらと
キスマークが残っていて、そうだった、なんて
思い出す。

結局そうちゃんってなんで仙台から
わざわざ東京まで来てるんだろ。

机の上に置いていた本を隠すようにしまう
そうちゃんを見ながら、聞いてみようかと考える。
でも教えてくれるかな。

思えば、私はそうちゃんの名前すら知らない。
そうくん？そうすけくん？そうたくんとか？
名字だって知らないし。

「そうちゃん、なんで東京来たの？」

どうしようと考えてみた結果、私のもうひとつの
得意料理、オムライスを頬張っているそうちゃんに
尋ねてみることにした。

「えー、…ひとり旅？うん、そーそー、旅。」

「絶対嘘じゃん！」

「ほんとほんと。」

「もー！受験もあるのによく
親御さんOKしてくれたね。」

「あー、おれ、もう受験しないから。」

「え？なんで？」

「…そういうの、話したくない。」

さっきまで楽しい空気だったのに。失敗した、と
すぐに思った。気を許してくれたんだと思って変に
干渉しすぎちゃった。

「だ、よね！そうだよね！ごめんごめん！」

必死に明るく言ってみるけど、気まずい空気感はそのまま。オムライスの味はもう分からなかった。

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