クルルの妹さん［6］ (ページ24)

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儀式ページ24

結婚式は新郎新婦、新婦の親以外誰にも見つからないような場所で行われた。

この当時のロシアは政府が公に戦争を始めていないだけで、外国の武装勢力、国内の武装勢力が外を平然と歩いているような時代。

そんな中、親しいもの達が一堂に集まり式を開くことなどできるはずがなかった。

ブローズの意味のない放浪癖はかなり鳴りを潜めた。

消えかかっていた筈の執着心が芽生え始めたからだと彼自身が自覚するのは結婚式から数週間経った頃だったが。

幸せながらも慎ましく暮らしていた二人の間に新しい命の知らせが届いた。

妻メルリスはとても喜んだ。

ずっと夢見ていた愛する人との間にできた小さな命

気が早すぎると周囲から何度もいわれるほど彼女は有頂天に立っていた。

一方のブローズは驚愕のあまり言葉を失った。

自分自身彼女との間に命が宿るという可能性が本当になるとは思ってもいなかった。

彼は異種族なりにも人間である妻の身体を気遣った。

そして彼の献身故か、メルリス自身の運の良さ故か、彼女の出産は比較的穏やかなものだった。

メ「貴方元気な男の子ですよ」

愛する妻に“抱き上げてみてくださいね”と言われ恐る恐る小さな命を抱き上げた。

彼は自分の氷のような体を溶かしてしまいそうなほど温かい赤子にとても驚いた。

メ「この子の……」

ブ「？」

メ「この子の名前はユーリイよ」

それは後にプルトンと名付けられる吸血鬼の真名だ。